──────…『死火』を探して、時空間を移動してきた私と羽久は。

ようやく、その持ち主に巡り会った。

一目で分かった。

見るからに…強い。

私と羽久でも、気を抜くと危ないな。これは。

羽久も一目でそれを察したらしく、油断なく身構えているようだった。

とはいえ…私は、『死火』の持ち主と争いに来た訳ではない。

まぁ、場合によっては争うことになるかもしれないが?

まずは、平和的に話し合いをするのが私の流儀というものだ。

「初めまして。私はルーデュニア聖王国、イーニシュフェルト魔導学院の学院長、シルナ・エインリーです」

「…」

「突然だけど、君は『死火』を知ってるね?」

「…」

彼は、何も答えなかった。

答えない代わりに、背筋がぞっとするほどの殺気を放った。

あぁ、怖い怖い。

私は涼しい顔をして続けた。

「その様子だと、知っているようだね。それどころか…君が『死火』の持ち主だね?」

「…」

やっぱり、何も答えてくれないようだ。

だが、構いはしない。

「君は『死火』を使って、人を殺しているのかい?」

あまりにも直接的な私の問いに。

彼は私の目をじっと見つめ返すだけで、何も答えなかった。

あぁ…成程。

「…お前、黙っていられる立場だと…!」

業を煮やした羽久が、殺気を滲ませながら迫ったが。

「いや、良いよ羽久」

「あ?何がだよ」

ちょ、私に殺気向けないで。怖い。

「良いんだよ。大丈夫」

「…ちっ」

重ねて言うと、羽久は納得したのか、不貞腐れたのか、舌打ち混じりに引き下がった。

よしよし。

「…俺は」

『死火』の持ち主である彼が、ようやく口を開いた。