その日の夜。

俺はいつも通り、アシバと共に帰宅していた。

そのときである。

「…キノファ。君にお客さんが来てる」

俺の耳元で、月読が囁いた。

お客さん…?

月読のこの表情を見るに、愉快なお客さんではなさそうだ。

…俺に「客」が来るのは、珍しいことではない。

何にせよ、アシバが近くにいるのは厄介だ。

「…アシバ、悪いんだが、俺は少し寄り道して帰る」

まずは、アシバと別れなくては。

「寄り道…?何処に?」

まぁ、当然の疑問だな。

「ちょっと、買い物にな」

そうとでも言っておけば、アシバは信じるはずだ。

疑うことを知らないアシバなら。

案の定、彼は。

「分かった。じゃあ、先に帰るよ」

彼は全く疑うことなく、そう答えた。

何も知らないアシバを騙すのは、心苦しかった。

だが、本当に「客」が来たのなら、アシバが近くにいては困る。

アシバと別れ、俺は月読に声をかけた。

「客は何処だ?」

「すぐ近く。焦らなくても、向こうから来てくれるよ」

…向こうから…。

一体何の用事があって俺のもとに来たのかは知らないが。

大体想像はつく。

また、その類の連中だ。

俺のもとに来るのは、いつもそうだから。

そして。

「…お前達か。俺に会いに来たのは」

「…ご名答」

その二人組は、突然俺の前に現れた。