「何より情報が足りないんだよな…」

…そうなのである。

エルク・シークス自身、散々探して見つからなかったのだから。

俺達が少し探したくらいで見つかるはずがないのは、当然なのだ。

「妹を探してるのに、その妹の名前すら分からないんだからな…」

「…あぁ…」

これは大問題である。

探している人物の、名前すら分かっていないのが現状。

こればかりは、エルクさんも分からないのだそうだ。

妹と別れたのは自分もまだ幼い頃で、妹の名前を覚えていないと。

ただ、いつも「リンちゃん」と呼んでいたことだけは覚えている、とのこと。

手掛かりはこれくらいだ。

「リンちゃん、なぁ…。じゃあ名前は、リン・シークスってことか…?」

「そんなに単純だったら良いけど…。あだ名の可能性もある。リンカとかリンナとか…」

「『リ』がつく名前だったら、大体あだ名がリンちゃんでもおかしくないだろう」

リーシャとかリオナとか…。

ましてやエルクさんの記憶は、ごく幼い頃のものだ。

彼は「リンちゃん」と呼んでいた、と記憶しているが…それは単に記憶違いで。

実は「リンちゃん」じゃなくて、「アンちゃん」だったかもしれないし、「ミーちゃん」だったかもしれない。

皆には黙っているが、俺は妹の存在そのものが、エルクさんの妄想に過ぎない、という可能性も考慮している。

幼い頃の記憶しかないのなら、充分有り得ることだ。

イマジナリーフレンドの、妹版だ。

さしづめ、イマジナリーシスターと言ったところか。

俺がそのように考えるのも、無理はない。

だって、あまりにも彼の妹に関する情報がなさ過ぎる。

役所に行って、少しでも彼女の痕跡を探そうとしても、収穫はまるでなし。

本当にそんな人物が実在したのか?と思うほど。

これ以上調べて、何も見つからなかったら…本当にイマジナリーフレンドである可能性も考慮しないといけないな。

そして。

役所で調べられるだけ調べ尽くした俺達は。