「…やめておいた方が良い?どうして?」

「んー…。あんまり良い予感がしないから」

「…」

良い予感がしない…。

月読がこう言うときは、大抵当たっているのだ。

以前にも、こういうことがあった。

何でもないいつもの依頼だと思って引き受けたら、後ろ暗い組織が関わっている案件だったり。

依頼を達成して、報酬を受け取る段階になってクライアントに夜逃げされたり。

まぁあまり良いことではないので、月読が悪い予感を感じたときは、依頼は断っておくのが吉。

しかし…。

「…」

ウルミは既に、エルクさんに依頼を受ける旨を説明する電話をしていたし。

アシバもイズチも、早速動き始めていた。

いつもとは違う、やり甲斐のある仕事だと思って、いつにもなく張り切っている。

…折角彼らがこんなにやる気を出しているのに、そこに水を差したくはなかった。

と言うか、ここまで皆乗り気なのに、今更断る理由がなかった。

彼らには月読が見えないし、彼女の声も聞こえないのだから。

五人目の幽霊的職員がやめとけって言ってるから、なんて言っても…相手にされないどころか、むしろ正気を疑われるだろう。

…無理だ。

「…引き受けるしかないよ。今回は」

「…そう」

月読が「良い予感がしない」と言うなら、きっとエルクさんの妹さんは…亡くなっているか、あるいは見つかったとしても会えないまま終わるのだろう。

多分、皆が期待しているような…感動的な再会が見られることはない。

だとしても。

彼らから希望を奪うことは、俺にも出来なかった。