Oさんに説明するのは、明日にする予定だったのだが。

連絡を入れると、今すぐ知りたいとのことで。

緊張しきった様子のOさんが、急いで事務所に駆けつけてきた。





「それで…どうでしたか?」

この期に及んで、一縷の希望にすがろうとするOさんを見ていると。

大丈夫、全部あなたの勘違いでしたよ、と言ってあげられたら…どんなに良かっただろう。

残念ながら俺達は、既に充分追い詰められているOさんを、更に追い詰めなければならないのだ。

それどころかOさんのこめかみに向けられている銃の引き金を、引かなくてはならないのだ。

気が進まないと言うか…それを通り越して、もう逃げたい。

ウルミは、耐えきれなかったのか、お茶を持ってくるなり逃げてしまった。

彼女は賢い。

イズチは死んだ目で、俺に「頼んだ」と訴えていた。

俺も頼みたいよ。

でもそういう訳にもいかない。

所長であるアシバもだ。

彼も気が進まないに違いないのに、黙々とテーブルの上に、封筒とボイスレコーダー、監視カメラのチップを置いた。

アシバは唇を舐めて、重い台詞を口にした。

「結論から言いますと…奥さんは、不倫していました」

Oさんにとっては…死刑宣告も同じだろうな。

案の定、Oさんは雷に打たれたようにびくんとして、泣きそうな顔をした。

あぁ…何度やっても慣れない。

罪悪感で逃げ出したくなる。

「これが証拠の写真…。それと、こちらが映像です」

「…」

Oさんは、震える手で写真を手に取った。

妻が、知らない男と仲良さそうに寄り添って、ホテルに入る場面を、ばっちりと激写していた。

「…この、相手の男性は?」

「あ、はい…。市内に住む、貿易会社に勤めてる30代の男性で…。…えっと、既婚者です」

アシバは、視線を逸らしながらそう言った。

そう。この浮気相手の男性、妻子持ちなのである。

妻子がいるのに、同じく夫がいる女と不倫するなど。

全くどんな神経をしてたら、そんなことが出来るんだか。

「…」

これには、Oさんも表情がなくなった。

能面のような顔で、そのままホテルの映像も観ていた。

…目が死んでる。

もう心と頭が解離してるな。これは。