「よし、片付け終わったぞ」

「あ、ありがとうございます…」

あっという間に魔導人形や剣を片付け終わったアトラスさんが、意気揚々と戻ってきた。

「私、役に立てなくて…済みません」

「うん?気にするな。シュニィはこの腕だからな」

アトラスさんは私の手を取り、私のぷよぷよの二の腕をふに、と触った。

なっ…。

「うん。そりゃあの人形は重過ぎるだろう」

笑いながら言うアトラスさんに、さすがの私もムッとした。

「失礼な。あの程度の人形…力魔法で重さを減らせば、いくらでも運べます」

「俺は重さを減らさなくても運べるけどな」

「それは、あなたが怪力だからです。私は非力な魔導師なんですからね」

「非力?何を言ってるんだ。学校一の天才魔導師が非力とは。面白い冗談だな」

「…は?」

私は、思わずすっとんきょうな声を出してしまった。

…冗談?それこそ冗談では?

「?どうした?」

「ど、どうしたって…。あなたこそどうしたんです。学校一の…何ですって?」

私の聞き間違いか?

「シュニィは学校一の天才魔導師だろう?」

何を当たり前のことを、と言わんばかりのアトラスさん。

な…なんて適当なことを。

誰だ、それを言ったのは。

「何を馬鹿なこと言ってるんです。私が天才魔導師だなんて…」

「違うのか?俺はずっとそう思ってたぞ」

「ば、馬鹿なこと言わないでください。私の何処が天才ですか」

私が天才なら、イーニシュフェルトの生徒は皆学校一の天才だ。

それなのに、アトラスさんはきょとんとしていた。

「だってそうだろう。魔法で剣を強化したり、重さや速さを変えたり…。今まで、誰もそんなことを思い付きはしなかったぞ。シュニィが初めてだ」

「そ、それは…偶然です。たまたま思い付いただけで…」

「たまたま思い付くことが凄いんじゃないか?それに、シュニィが一緒だと、物凄く戦いやすいんだ。いつも、俺が一番欲しいときに、一番欲しい補助魔法を的確に入れてくれる。こんなに自由に、思い通りに動けるのは初めてなんだ」

…それは。

アトラスさんを見ていたら…自然と、段々分かってきただけだ。

このタイミングで加速が欲しいだろうな、とか。

このタイミングで剣を軽くして欲しいだろう、とか。

いつも、直感的に動いているだけで…。

「どうやら俺とシュニィは、随分相性が良いらしいな。これからも宜しく頼むぞ、相棒」

アトラスさんはそう言って、私の背中をパン、と叩いた。

「あ、相棒…」

そんなことを…あなた、平気で…。

私は何と言って良いのか分からなくて、ただ照れ隠しの為に、そっぽを向いた。

「…力加減してください。痛いです」

「あ、ごめん…つい…」

本当に…不思議な人。

私に、こんな風に接してくる人なんて…今まで一人も…。