「あのねぇ、羽久…!事実なのかもしれないけど。事実なのかもしれないけど!でもそんなはっきり言わなくて良いんじゃないの!?」

正直に言って良いと言われたから言っただけなのに、何故か逆ギレされた。

理不尽だ。

「キモいんだから仕方ないだろ。何だよその顔面は…」

「顔!?顔が悪いの?じゃあどうしたら気持ち悪くないのか言って。その通りにするから」

うん。

そうだな…じゃあまずは。

「目を…もう少しぱっちりさせる」

「はい」

「眉毛を…もう少し短めに」

「はい」

「口元は…笑うとえくぼが出る感じで」

「はいはい」

「顎のラインをもう少しシャープに」

「はい」

「全体的にワントーン肌を明るめに」

「こんなもんかな」

「髪型はミディアムボブで」

「はいはい」

「…」

「…終わり?」

「うん…」

完成。シルナ29号(仮)。

頭のてっぺんから足の先まで、じっくりと眺めて…。

「…ごめんやっぱりキモい。シルナの分身だと思うと無条件でキモいわ」

「酷い!リクエスト全部応えたのに!」

うん。リクエストに全部応えてくれたのは分かってる。

これがもしシルナじゃなくて、道を歩いている女性だったら、あら美人、と思うのだろう。

でもこれ、シルナが魔法で作った、シルナの分身だから。

もうそれだけでキモい。

シルナが全力で女装してるようにしか見えない。

「ってか、何でまた分身増やす訳?もう既にめちゃくちゃいるんだから、これ以上増やさなくても良いじゃん」

何人いると思ってんの。シルナの分身。

一匹見つけたら、近くにあと五匹はいると思った方が良い。

Gかよ。

「だって…。新しい授業増やして欲しいって、魔導教育委員会から要請が来たんだもん。『魔導科学総論』っていう授業…」

「ふーん…」

授業が増えると、新しい教師…つまり新しい分身…が必要になると。

頑なに俺以外の外部講師を雇うつもりはないんだよな。この人。

「なら年相応に…おっさん分身を量産すれば良いじゃん。小汚ない感じの…」

「やだよ!何それ!私はね、清潔感のある教師でいたいの!」

その顔面で清潔感とか言われてもね。

元々がおっさんの癖に、若くて美人な女性教師の分身を作る方が、よっぽど小汚ないと思うけど。

「それに現状うちの学校、男性教師の比率の方が高いんだもん。だから次増やすとしたら女性だよ」

イーニシュフェルト魔導学院に、シルナの分身は腐るほどいるが。

実は、姿形だけでなく、性別や性格、年齢まで、全て異なっているのである。