「はぁ~…。やれやれ…」

「…」

「やっぱり落ち着くね~」

「…」

イーニシュフェルト魔導学院、学院長室にて。

シルナは深々とソファに腰掛け、ほっと一息、熱いお茶を飲んでいた。

…おっさん通り越してジジィじゃんと思ったけど、長らく俺を探していたせいで、全然まったり出来なかったんだろうなと思うと。

まぁ今日は何も言うまい。

明日から言おう。

「…つっても、俺を探してる間も、分身は学院で授業してたんだろ?」

「そりゃあしてたよ。分身飛ばすだけだもん」

変態じみた魔法だな。相変わらず。

「本体の方は、羽久を探してたけどね」

「逆だろ…」

分身で俺を探して、本体は学院に残っていれば良かったのに。

しかし。

「羽久を探す以上に優先することなんて、何もなかったからね」

当たり前のようにそう言って、ずずず、とお茶を啜るシルナ。

…そりゃどうも。

「…色々心配かけたみたいで…悪かった」

俺を探してた千年の間。

多分シルナは、凄く辛い思いをしたんだろう。

俺だって、わざと行方不明になった訳じゃなかったんだけど…それは素直に申し訳なかった。

すると。

「…私はね、君の中に誰がいても、君が何処に行っても構わないよ。いなくなれば見つかるまで探すし、君以上に大事なものなんて、私にはないからね」

「…シルナ…」

「…でも、おやつは私のぶんも残しておいて欲しいな…」

「…」

…思い出した。

そういえば前に会ったとき、おやつを巡って喧嘩別れしたんだっけ。

「…千年たっても何も変わってなくて安心したよ、シルナ」

「そう。それは良かった」

「あぁでも、ちょっと老けたのは事実だな」

「それは言わなくて良いからね。あと老けてないから」

まぁ、そういうことにしておいてあげるよ。今回はな。
























END