シルナ達と共に、アジトを出るとき。

「…行くの?」

マキナスに、声をかけられた。

「…マキナス…」

「今度は行き倒れないでよ」

…そういえば。

この人が俺を拾ってくれなければ、ジュリスのもとにも辿り着けなかったんだよな。

『オプスキュリテ』で俺の面倒を見てくれた人間の筆頭でもある。

それなのに人間であるマキナスには、俺は自分の事情を何も説明することが出来ないのだ。

「…君が、この子を助けてくれたんだよね」

「うん?そうだけど」

シルナがマキナスに歩み寄り、気付かれないようにそっと…彼に魔法をかけた。

魔法と言うより…あれはおまじないだ。

ルーデュニア聖王国に伝わる、幸福のおまじない…。

「ありがとう。君の人生に幸多からんことを」

「そりゃどうも。心配されなくても、僕の人生は幸多いよ」

何処から出てくるんだか、その自信が。

でも間違いではない。シルナの祝福を受けたマキナスは、きっとこれから、自分の人生を全うすることだろう。

「…ありがとう、マキナス」

「元気でね。行き倒れそうになったらまた戻ってきても良いよ。…戻ってこずに、何処かで幸せに生きてるなら、それでも良いけどね」







必死に俺を探してくれたシルナ達には悪いが。

サナキとして、『オプスキュリテ』に来て良かった。

心から、そう思った。