「…」

「…羽久?」

「…シルナ…」

「羽久…!」

感動の再会を喜ぼうとしたシルナに、俺は。

「…シルナ…なんか、老けた?」

物凄く、正直な感想が出てきた。

シルナはずるっ、とずっこけた。

「酷い!折角の再会なのに!何年ぶりだと思ってるの。そりゃ老けるよ!」

「あぁ…。うん…」

「無事で良かったです、羽久さん」

クュルナは、泣きそうな顔でそう言った。

シルナはまぁ分かるが、クュルナまで探してくれていたのか。

「…ごめん。なんか…色々心配かけたみたいで」

「そりゃね、めちゃくちゃ心配したよ。でも…無事だったから良いよ。お帰り、羽久」

「ただいま…」

…凄く、長い間眠っていたような気がする。

自分の意思で身体を動かすのは、いつぶりなのだろう。

「…どうやら戻るべきところに戻ったようで。良かったな、サナキ。…っと、もうサナキじゃないんだっけ」

「…ジュリス…」

「ん?俺を覚えてるのか」

あぁ、覚えてる。

いつもの俺は、「入れ替わってる」ときの記憶はない。

自分の中に複数の自分がいることは知ってる。シルナが教えてくれたから。

起きたとき、他の人と話が噛み合わなかったこともある。

俺は他の俺を知らないし、他の俺も俺を知らない。

でも。

羽久・グラスフィアである俺は、サナキであるときの俺を覚えている。

サナキであったときの記憶がある。

従って、ジュリスのこともマキナスのことも、『オプスキュリテ』のことも…覚えている。

そして、羽久である俺は。

ジュリスが、魔導師であることも分かる。

「ジュリス…。どうして、俺を傍に置いてたんだ?」

今俺が、ジュリスを一目見てそうと分かったように。

ジュリスだって俺を見てすぐ、俺が異邦人であると分かったはずなのに。

どうして…俺を人間として…仲間として扱ったのだ?

「お前が、魔導師のスパイとして潜り込んだ訳じゃなくて…本当にただ『迷子』になってるだけだと分かったからだよ。保護者が迎えに来るまで、面倒見てやろうと思っただけだ」

「…」

「もし迎えがいつまでも来なかったら、ここでサナキとして、人間として生きていけば良いと思ってたよ」

それはそれで…アリだったのかもしれないな。

シルナは絶対に納得しなかったろうけど。

「でも、無事に迎えが来た。もとのお前…羽久としての人格も戻ったんだろう?なら…もうここにいる必要はないな」

「…ジュリス…」

「行けよ。お前が本来いるべき場所に、いるべき人のもとに帰るんだ」

ジュリスは、微笑みながらそう言ってくれた。