それからというもの、私は毎日のように、放課後になると訓練場に向かった。

「どうです?これで」

「おぉ…!凄い。これなら行けるぞ」

何日も、試行錯誤を重ねて。

ようやく、アトラスさんの剣が完成した。

何重にも魔法をかけた、世界に一本しかない魔装剣である。

「これなら魔法も切れるし、魔導師にも対抗出来るな!」

「はい。あとは、当日相手が使う魔法の属性によって、刀身に何を纏わせるかを決めましょう」

敵が水魔法使いなら雷魔法を。

敵が炎魔法使いなら水魔法を、といった具合に。

「しかし、シュニィ。相手が複数の魔法を使ってきたらどうする?」

と、懸念するアトラスさん。

確かに、最初相手が水魔法を使ったから雷魔法の剣にしたのに、今度は炎魔法も使い始めてしまったら、相性が悪くなってしまう。

一種類の魔法しか使っちゃいけませんなんて、そんなルールはないからな。

それは私も考えた。

だから。

「心配ありません。相手が使う魔法の属性を変えたら、こちらも変えましょう。そこは私が臨機応変に対応するので、あなたは特に気にしないでください」

「お、おぉ…?それで大丈夫なのか?」

「えぇ。大丈夫だと思いますが…。しかし、そうなると、どうしても私が後衛であなたが前衛になってしまうんですが…それでも良いですか?」

彼は剣士だから、元々前衛のタイプのはずだが…。

私は後ろにいるから、お前前衛な、と勝手に決められるのは嫌かな、と思った。

しかし。

「あぁ、それで良い。俺は後ろでサポートするより、前に出て何も考えずに相手を倒す方が性に合ってる」

「…」

…最近気づいたのだが。

この人、割と脳筋的思考だ。

そりゃああれだけ重い剣をぶんぶん振り回してるのだから、頭の中まで脳筋でもおかしくないだろうけど。

「それより、ルール違反に問われないかが心配だな」

「ルール違反…ですか?」

アトラスさんは、バリバリと電流を迸らせる剣を見つめながら言った。

「あぁ。剣に魔法を纏わせるなんて…俺達は勝手にやってるが、ルール違反だと言われないか?」

確かに…剣を魔法でドーピングするなんてルール違反だ、と揚げ足を取る人がいても、おかしくはないが。

だが、私はそんなに心配していない。

「工夫の範囲でしょう。他のペアだって、お互いの魔法を組み合わせて、新しい魔法を作ったりしてますし」

「工夫の範囲…。そうか?」

「誰だって人それぞれ持ち味は違いますし、私達のペアは一人が剣士という特性を持っているのだから、それを活かす戦術を考えるべきです」

大体、私達は二人共、皆からハブられたはみ出し者同士がくっついたのだ。

誰にも文句は言えないだろう。

「そうか…そうだな!」

アトラスさんは笑顔で、私の頭をくしゃくしゃと撫でてきた。

持ち前の馬鹿力のせいで、髪が千切れるかと思った。

「い、痛いんですけど…」

「あっ、ごめん、つい」

…この人、よくこんなことをするのだ。

私に触ることに、全く抵抗がないようで。

さっきみたいに頭をくしゃくしゃしてきたり、他にも…。