…マキナスがそう思うのも無理はない。

「何て言うの?なんか、そういう病気があるでしょ?妄想を本気にしちゃう病気…」

「あぁ…あるな」

「多分、本当の記憶もあながち間違ってはないんだよ。妄想と言っても、根と葉くらいはあるんだ」

根と葉。

つまり、サナキは昔、家族から奴隷のように酷い扱いを受けていたとか。

子供の頃から、馬馬車のように働かされたとか…。

それらの記憶が、サナキの中で今回の「妄想」を生み出したのだと…そういうことだな?

「そして、サナキを奴隷のように扱ってきた人…家族か上司か何か知らないけど、その人のもとから逃げてきたっていうのも本当なんだろうね」

…あと、過去に辛い思いをしたっていうのも本当なんだろうな。

その結果、あの「妄想」が生まれた。

「そうかもしれないが…。でもサナキは、自分の過去を妄想だとは思ってないぞ」

「そりゃそうでしょ。妄想を妄想だと認識してたら、そもそも口に出さないよ」

…お前それ妄想だろ、と突っ込んでも、絶対認めないだろうな。

だってサナキにとっては、その「妄想」が本物なんだから。

「…まぁ、僕は別にどっちでも良いよ。あれが妄想でも現実でも」

マキナスは一つ嘆息して、興味を失ったようにそう言った。

「おいおい…。変わり身早いな」

「何?ジュリスは気になるの?」

「いや…俺も気にしてないけど」

大層俗な言い方だが…サナキはサナキだからな。

彼がどんな過去を持っていようと、それはどうでも良い。

俺達にとって大事なのは、今のサナキだ。

だから。

「…別に何でも良いさ。あいつが、何を抱えているのだとしても…」

マキナスも知らない、多分サナキ本人でさえ気づいてない、あいつのとんでもない秘密だって…。

俺にとっては、どうでも良かった。

サナキはサナキで、そして今のあいつは、俺の仲間だ。

だから、俺は仲間を守る。それだけだ。