「…?」

俺は、軽く頭を振って、覚えのないイメージを振り払った。

…何だったんだ、今のは。

あんなもの、俺には覚えがない。気持ちが悪い。

あの記憶は、俺のものじゃない。

じゃあ、さっきのは一体何だったんだ…?

「…」

俺は、自嘲気味に笑った。

馬鹿馬鹿しい。

あれは俺のものじゃない。多分、ここでの生活と、かつて見た風景がごちゃ混ぜになって…脳みそが勝手なイメージを作り出してしまっただけだ。

もしかしたら、無意識に疲れてるのかもな。

それも仕方ないだろう。

俺は奴隷商人のもとから逃げて以来、ずっと気の休まる暇もないまま、宛もなく逃げ続けていた。

いつ捕まるかと、死の恐怖に怯えながら。

それがようやく、落ち着ける場所を見つけたものだから…気が抜けて、勝手に頭が、変な記憶を作り出しているのだ。

もう少しして、『オプスキュリテ』に腰を据えて…。奴隷商人に怯えることがなくなったら。

きっと、俺は過去の記憶に脅かされることもなくなるだろう。

ここにいれば、きっといつか…。