故郷、故郷…か。

俺はその日の夜、ベッドに横たわりながら、マキナスとの会話を思い出した。

そして、故郷の風景も。

故郷の風景を、俺ははっきりと覚えている。

無邪気に懐かしいと思うほど、幸せな子供時代ではなかった。

俺を捨てた両親と、妹のことを思い出した。

彼らは何をしているんだろう。まだ生きているのだろうか?

借金は返したんだろうか。妹は結局、手放さずに済んだのだろうか。

きっとどれだけ生活に行き詰まっても、妹だけは手放さないだろうと思うが。

でも、それも怪しいものだ。

本当に困ったら、あの人達は可愛がっていた娘でさえ、売り物にするだろう。

そういう人達だ。

その後、俺はかつて奴隷として働かされた農園を思い出した。

あそこにいた日々は、本当に酷いものだった。

あの主人が死ななかったら、俺は今でもあそこにいたんだろうな。

こう言ってはなんだが、死んでくれて良かった。

そして、俺が行くはずだった炭鉱を想像した。

あそこに行ったら、俺は何日生き延びられたんだろう。

きっと、長くは生きられなかっただろうな。

それから、俺を血眼で探しているはずの奴隷商人達を思い出した。

俺を見つけたら、あの人達は地獄の獄吏のような顔をして、俺を痛め付けるんだろうな。

まさか俺が地下に隠れているとは思っていないはずだ。

いつまで探し続けるんだろう。一年?二年?

どれだけの間探して、見つからなかったら、諦めてくれるのだろうか。

…早く諦めてくれたら良いんだけどな。

「…あれ?」

かつて自分が過ごしてきた場所を、その風景を思い出していると。

ふと、プツプツとノイズのように、覚えのない景色が混じっていることに気がついた。

…この記憶は、何なんだろう?