自分でも、自覚はなかった。
しかし。
「はい、これうちの取引先一覧。目を通しておいて」
「…」
移動の途中、マキナスに紙の束を渡されて、俺は途方に暮れてしまった。
そこに書いてある文字が、全く読めなかったからである。
「…どうしたの?」
困惑している俺に、マキナスが声をかけた。
「いや…。これ…何て書いてあるのかと思って…」
「え。君文字読めなかったの?」
…そうらしい。
「それならそうと、早く言ってくれれば良いのに」
「ごめん…」
「別に良いよ。うちには字が読めないのは多いからね。僕も、ジュリスに拾われるまでは読めなかったし」
あ、そうか…。貧民街出身なんだもんな。
当然、学校になんて通ったことはない。
俺も、昔は学校に通っていたのだが…。ほんの僅かな期間だったせいか、もうすっかり忘れてしまった。
「仕方ないな。じゃあ君もチビ達に混じって、読み書きを覚えると良いよ。知ってて困ることじゃないし」
「…分かった」
「…はぁ、全く…。ジュリスも、とんでもない新人を押し付けてくれたもんだよ。せめて字くらいは読めるようにしてから、投げてくれれば良かったものを」
それは悪かったですね。
仕方ないだろ。まともに学校通ったことないんだから。
「そういえば、地理もからっきしだったもんね。自分が何処にいるのかも分かってない、記憶喪失だったし」
「うん…」
「あれから記憶、戻ったの?」
「…まぁ、ある程度は」
何で自分が行き倒れていたのかは、ちゃんと分かってる。
流れ流れて、ルティス帝国に辿り着いてしまったのだろう。
「ふぅん…。じゃあ家族は?帰らなくて良いの?」
「…帰る場所はない」
「あぁ、そう」
俺に家族なんていない。
それどころか、俺は追われる身だ。
「ならこれまで通りうちにいれば良いよ。何だか、ジュリスは君のことが気に入ってるみたいだし…」
「…え?」
「まぁ、そう見えるだけかもしれないけどね」
ジュリスが俺を気に入ってる、って…。
そんな風には見えないが…。気に入ってくれているのだろうか?
しかし。
「はい、これうちの取引先一覧。目を通しておいて」
「…」
移動の途中、マキナスに紙の束を渡されて、俺は途方に暮れてしまった。
そこに書いてある文字が、全く読めなかったからである。
「…どうしたの?」
困惑している俺に、マキナスが声をかけた。
「いや…。これ…何て書いてあるのかと思って…」
「え。君文字読めなかったの?」
…そうらしい。
「それならそうと、早く言ってくれれば良いのに」
「ごめん…」
「別に良いよ。うちには字が読めないのは多いからね。僕も、ジュリスに拾われるまでは読めなかったし」
あ、そうか…。貧民街出身なんだもんな。
当然、学校になんて通ったことはない。
俺も、昔は学校に通っていたのだが…。ほんの僅かな期間だったせいか、もうすっかり忘れてしまった。
「仕方ないな。じゃあ君もチビ達に混じって、読み書きを覚えると良いよ。知ってて困ることじゃないし」
「…分かった」
「…はぁ、全く…。ジュリスも、とんでもない新人を押し付けてくれたもんだよ。せめて字くらいは読めるようにしてから、投げてくれれば良かったものを」
それは悪かったですね。
仕方ないだろ。まともに学校通ったことないんだから。
「そういえば、地理もからっきしだったもんね。自分が何処にいるのかも分かってない、記憶喪失だったし」
「うん…」
「あれから記憶、戻ったの?」
「…まぁ、ある程度は」
何で自分が行き倒れていたのかは、ちゃんと分かってる。
流れ流れて、ルティス帝国に辿り着いてしまったのだろう。
「ふぅん…。じゃあ家族は?帰らなくて良いの?」
「…帰る場所はない」
「あぁ、そう」
俺に家族なんていない。
それどころか、俺は追われる身だ。
「ならこれまで通りうちにいれば良いよ。何だか、ジュリスは君のことが気に入ってるみたいだし…」
「…え?」
「まぁ、そう見えるだけかもしれないけどね」
ジュリスが俺を気に入ってる、って…。
そんな風には見えないが…。気に入ってくれているのだろうか?