宣言通り、一日の仕事が一段落してから、マキナスはそこに俺を連れていってくれた。

狭くて汚い土地に、粗末な家が所狭しと身を寄せ合うようにして立っている。

…所謂、貧民街という場所だ。

現代社会にまだそんなものがあるのか、と思われそうだが。

まだあるのだ。そんなものが。

むしろ、国が豊かになったが故に…そこからはみ出した人々が生まれるのだ。

そしてマキナスは、そんな貧民街に、臆することなく入っていった。

俺も、その後を追った。

マキナスの姿を見るなり、貧民街の子供達が、目を輝かせながらわらわらと寄ってきた。

マキナスはその子供達に、順番に食べ物を配っていった。

パンやチョコレート、飴玉など。

子供達だけでなく、汚い身なりをして物乞いをする老婆や、赤ん坊を抱えた女性にも。

施しを求める飢えた人々に、平等に食べ物を配った。

俺も、それを手伝った。

成程ね。

大衆食堂でマキナスが言っていたのは、こういうことだったのだ。

食べ物を分けてもらった人々は、皆九死に一生を得た、みたいな顔をしていた。

実際彼らにとっては、溺れているところにロープを垂らされたのと同じなのだろう。

…俺も、こうなっててもおかしくなかったんだろうな。

そう思うと、他人事とは思えなかった。

マキナスみたいな人間がいるからこそ、生きられる人もいるのだ。

小洒落た料亭で、立派な食事をするよりも。

自分は粗末なものを食べてでも、飢えているに施しをしたい。

マキナスの気持ちは、よく分かった。

実際ここで、飢えた人々の姿を見ていたら…。そんな風に思うのも、当然というものだ。