それにしてもこの人、魔導師でもないのに、どうやって魔法相手に戦うつもりなのだろう。

もしかして、魔法に向かって剣を振り回すだけなのだろうか。

まさかそんな短絡的な…と思ったら。

「ふんっ!とうっ!はぁっ!」

…本当に、剣を振り回してるだけだった。

この人、愚直にも程がある。

「あの…何してるんですか?」

私は、ぶんぶんと剣を振り回すアトラスさんに声をかけた。

「何って…訓練だが…?」

そんなきょとんとして言われても。

「そんな…闇雲に剣を振り回してるだけじゃ…」

「闇雲にと言われても…。俺の持ち味はこれだからな」

それは結構なのだけど、ここは魔導学院だから。

皆魔法で戦う訳だから。

「そんな風に剣を振り回していても…。魔法相手では…」

こんなことは言いたくないが。

魔導師相手では、良いカモにされるだけだ。

そのとき初めて、私は自分の失言に気づいた。

つい勢いで言ってしまったけど、逆ギレされて殴られるかもしれない、と思った。

内心怯えた私だったが、アトラスさんは私に逆ギレするつもりはないらしく。

「そうか…。パワーと勢いで魔法を相殺出来るかと思ったんだが…。やはり無理か?」

「え?あ…はい。腐っても…イーニシュフェルトの生徒なので…」

パワーや勢いだけでどうにか出来るほど、甘くはない。

「どうすれば魔法に対抗出来るんだろう…」

アトラスさんは、額を押さえてそう呟いた。

どうすれば魔法に対抗出来るか…。

「…」

「…?シュニィ?」

「…あ、いえ…ちょっとその剣、貸してもらっても?」

「ん?別に良いぞ」

アトラスさんは、自分の剣を手渡してくれた。

予想以上にずっしりと重くて、この人はこんなに重い剣を振り回していたのかと感心してしまった。

「どうするんだ?」

「えっと…ntrengthes」

私は杖を振って、アトラスさんの剣の刀身を強化した。

刀身全体が、薄い透明な膜のようなものを纏った。

「はい、これで使ってみてください」

「…?何か変わったのか?」

怪訝そうな顔をしながら、アトラスさんは剣を受け取り、試し斬りとばかりに、訓練用の魔導人形に剣を振り下ろした。

いつもなら、魔力で防御された魔導人形を壊すには、何度も剣を振り下ろし、叩き壊さなければならない。

しかし。

アトラスさんの剣は、たった一発で、魔導人形をすっぱりと真っ二つに切り裂いた。