「私が把握しているだけだと…四人はいるかな?」

「四人…」

羽久と、未来ちゃんとステラちゃんと…あとは、二十音。

でも。

「私が知らないだけで、他にもたくさんの人格がいる可能性は充分にある」

と言うか、いるだろう。

私が知らないだけで。他の羽久が。

「性格も性別もそれぞれだよ。羽久は時魔法が得意だけど、逆に魔法そのものが苦手な子もいる」

未来ちゃんは人見知りが激しいけど、ステラちゃんは誰とでも話せるし。

正に十人十色という奴だ。

それだけではない。

これから現在進行形で、他の人格が増えていく可能性だってあるのだ。

「だから、私が心配しているのは…私が知らない間に、羽久の中に別の人格が発生して…。その子が勝手に、違う場所に行ってしまったかもしれないってことだ」

「…!?そんなことが…」

「…有り得ないとは言えないんだよ。羽久の中の人格は、どれも別人で…。しかも、記憶を共有している訳じゃないから」

身体は共有している。

でも、記憶まで共有している訳じゃない。

羽久は、他の人格になっているとき…未来ちゃんやステラちゃんになっているときの記憶を持ってない。

故に羽久自身、自分の中に何人の人格があるのかを知らない。

羽久はあくまで、羽久であるときの記憶しかないのだ。

眠っているときの自分が何をしているのか、自分では把握出来ないのと同じ。

羽久が行方不明なのは、もしかしたら…自分の知らないうちに別の人格が発生して、その新しい人格が…羽久としての記憶を持たない真っ白なその子が…勝手に、別の場所に行ってしまったのかもしれない。

充分考えられることだ。

と言うか、羽久が突然いなくなる理由なんて、それくらいしか考えられないのだ。