何でここに…って、言われても。

それは…俺の過去について話せと言ってるのか?

その話は『オプスキュリテ』ではタブーなのだと言ってなかったか?

組織の長であるジュリスが聞くなら、答えても良いけれど…。

「…逃げる為に来たんだ」

「…逃げる…?」

「俺を…連れ戻そうとする者に…」

「…それは…」

ジュリスは、真っ直ぐに俺の目を見て。

不思議なことを聞いた。

「…人間か?」

「…は?」

人間?

俺を連れ戻そうとする者が、ってこと?

いや…。人間以外の何なんだ?何か…獣か?

ぽかんとする俺に、ジュリスは。

「…あぁ、良い。分かった。言わなくて良い」

「ジュリス…?」

「悪かった、変なこと聞いて…」

「…」

…本当に変な質問だったな。

もう言わなくて良いのか?過去の話…。

あまり話したいことではないから、話さなくて良いのは有り難いけど。

「…それと、サナキ」

「ん?」

「お前の初仕事。明日から、マキナスと一緒に『青薔薇連合会』に納品する武器調達。宜しく」

予期しないボディブローを食らった気分。

正気か。

「俺に…?こんな右も左も分からないド新人に…」

「マキナスが右も左も教えてくれるよ」

「しかももし間に合わなかったら、ルレイアさんに鎌で刈られかねないのに」

「…それは保証出来ないな。あの人ならやりかねないし」

そこは保証して欲しかったな。

「うちも一応非合法組織だからな。金儲けの為には、危ない橋は渡らにゃならん」

「…それは納得出来るが」

「まぁ、そんなに心配するな。お前なら大丈夫だ。必ずな」

…何処から出てくるんだ?その自信は。

その言葉を信じて、鎌の錆にされなきゃ良いのだが。