「…サナキ?どうした?」

「…」

「サナキ…。おい、サナキ!しっかりしろ」

「え…。あ?何?」

肩を揺さぶられて、我に返った。

「大丈夫か?」

「あ…あぁ、大丈夫…」

今、頭の中に見えたものは何だったんだろう。

あんな景色…俺は一度も。

…俺は?

「…そんなに心配するなよ。ルレイアさんも言ってただろ。大丈夫だって。万が一に備えるだけだよ」

「あぁ…」

「もし本当にシェルドニアが攻めてきても、戦うのは帝国騎士団だ。俺達には関係ない」

その帝国騎士団というのが何なのかは分からないし。

シェルドニアの侵攻が怖い訳でもないのだが。

俺が怖いのはそれより…。

「…サナキ」

「…何?」

「今日、夕食外に食べに行かないか」

唐突に。

ジュリスが、そんな誘いを持ちかけてきた。

「外に…?」

「嫌なら別に良いけど…」

「いや、嫌な訳ではないけど…。でも、忙しいんじゃないのか?」

大量の発注をもらったばかりなんだろう?

忙しくて、俺に構ってる暇なんて…。

「新人歓迎会代わりだよ。俺の奢りだ」

「あ、そういう…。別に仕事が落ち着いてからでも…」

「それだと当分先になっちまうだろ。良いから、今夜だ」

…まぁ、ジュリスがそう言うのなら。

「分かった。じゃあ、今夜で」

「あぁ、宜しく」

実はあまり、食べることに興味のない俺だが。

ジュリスが奢ってくれるのなら、有り難く頂こう。