地下組織『オプスキュリテ』。

今日から、俺が入ることになった組織だ。

しかし俺は、この組織が何なのか、何をする組織なのか、さっぱり知らないままなのだ。

何せ、昨日まで道端で倒れていたのだから。

そして、それをマキナスに聞こうとしたところに、ジュリスがやって来て。

結局、質問し損なってしまった。

そこで。

俺は改めて、聞いてみることにした。

「『オプスキュリテ』っていうのは…何なんだ?」

「ん?そうだな…。何て言えば良いんだろうな。まぁ、非合法組織だよな」

非合法組織?

「それは…マフィア…みたいな?」

マフィアと言ったら…馬鹿みたいな利息で金を貸し、返せなかった者に恐ろしい拷問をかけたりするんだろう?

ジュリスやマキナスが、拷問室で被害者が指を詰める様を、にやにやと眺めている姿を思い浮かべた。

…うん。

なかなか肝が据わってないと出来ないよな。

しかし。

「マフィア…とは違うな。確かにマフィアとも取引してる…と言うか、俺達の商売は、大半がマフィアのお陰で成り立ってるんだが」

マフィアと取引をしてるけど、マフィアではない?

それって、一体どういう立場になるんだ?

「スポンサーがマフィアなんだよ。知ってるでしょ?『青薔薇連合会』って」

マキナスがそう補足した。

『青薔薇連合会』…?

「え、ちょっと。知らないの?」

「…聞いたことがあるような…ないような…」

…記憶の遠くの遠くにあるような気はするんだが。

「まさか君、記憶喪失なの?ルティス帝国最大のマフィアだよ。子供でも知ってるよ」

「…ルティス帝国?」

っていうのは?

マキナスは、ドン引きの表情だった。

「…自分が何処にいるかも分かってないなんて…。ジュリス、この人記憶喪失だよ。本当にうちに入れちゃって良いの?」

「別に良いじゃないか?記憶があろうとなかろうと。自分の名前は分かってるみたいだし」

「それだって怪しいものじゃないか」

そう言われると…否定出来ないが。

「偽名でも構わないよ。そういう奴もいるだろ。うちには」

「それはそうだけど…」

…偽名のつもりはないんだけど。

サナキというのは、紛れもなく俺の本名だ。

「俺達が今いるのが、ルティス帝国。そして『青薔薇連合会』ってのは、そのルティス帝国にある最大の非合法組織…つまりマフィアだよ」

「そんなマフィアと、取引を…?」

「そう怯えるなよ。あいつらだって、意味もなく暴力を振り撒いたりしない。筋は通ってるし、話は分かる連中だ」

「おまけに金持ちだしねぇ。商売するにはうってつけの相手だ」

「全くだな」

…。

ジュリスもマキナスも、慣れているから感覚が麻痺しているらしいが。

そんな大きなマフィアと取引しているなんて…。もしかして『オプスキュリテ』って、とんでもない組織なのでは?