監禁されていた五人は、すぐに見つかった。

五人共、檻の向こうに俺達を見つけて、まるで地獄に一本の糸が垂らされたかのように喜んだ。

憔悴しているが、一応生きてはいるようだ。

「よ、良かった…!助かった…!」

「あ、ありがとう!君達は命の恩人だ!」

「…」

Jさん達は、口々に感謝の言葉を並べ立てたが。

俺達には、ちっともその言葉が届かなかった。

「はいはい。さっさと出て」

本来亜空間なんて、人間のいて良いところじゃないんだからさ。

五人を連れて現実に戻ると、そこには放心したように項垂れるグリード。

そんなグリードを見て、Jさんが声を荒らげた。

「お前っ…!ふざけたことしやがって!」

そして、Kさんも。

「自分が何をやったのか分かってるのか?この犯罪者が!」

LさんとMさんも。

「絶対に許さないからな。訴えてやる!」

「お前はこれでもう終わりだ!破滅させてや…」

「いい加減にしろよ、お前ら」

怯えるグリードの代わりに、俺が五人にそう言った。

「お前らに、こいつを責める資格があると思ってんのか?こいつにここまでさせたのは誰だと思ってんだ?」

「…!」

五人共、青天の霹靂みたいな顔をした。

自分達が何をやったのか、まるで理解していないようだ。

そうだろうな。

グリードが何でこんなことをしたのか、こいつらは全然分かってない。

「悪いのは確かにグリードだ。でもこれは復讐なんだ。お前らがグリードに何もしなければ、グリードの心を傷つけなければ、グリードだって、復讐なんてしなくて済んだんだよ!自分達だけが被害者みたいな顔してんじゃねぇ!」

許せなかったんだろう。グリードは。

許せなかったから、こんなことをした。

グリードがこいつらを許せなかったのも、無理はない。

それだけのことをされてきたのだから。

「お前らにしてみりゃ、ガキのお遊びだったのかもしれないが…。そのお遊びに、何年も…今も、苦しめられている人間がいるんだよ。お前らがへらへら笑って、幸せを享受してる間もな」

「…」

嫌と言うほど、思い知らされたことだろう。

自分達が、どれほど恨まれているのか。

これからも、ずっと恨まれるのであろうことも。

「…人を不幸にした人間が、幸福になる権利はない…とまでは言いませんけど」

ルイーシュが、五人を軽蔑の眼差しで見つめた。

「でも、自分が不幸にした人間がいるってこと、自分を憎んでる人間がいるってことは、いかなるときでも忘れるべきではないと思いますよ」

…それを忘れたが故に、こいつは今回、こうして足元を掬われたんだろうな。

五人共、項垂れて無言だった。

自分達の過去の行いのせいで、グリードに復讐されたんだってことは、分かってるようだな。

良い心掛けだ。

「おい、お前もめそめそしてないで起きろよ」

俺は、グリードの腕を掴んで立たせた。

「当然お前は裁かれるけど、でも禁書に唆されたんだろうし、動機が動機だから情状酌量の余地もある。それほど重い罰にはならないように便宜も図ってやるよ」

「…」

「…もうお母さん苦労させんなよ。折角良い機会なんだ。ちっとは外を見てみろよ。お前の部屋の中にはなかった辛いもんと…それから楽しいもんが、たくさんあるからさ」

グリードは、ハッとして顔を上げた。

こいつがこれから、どんな風に生きていくのか。

楽しみだ。