俺は、次々に魔弾を装填し、隙間なく弾幕を張った。

ファントムの攻撃は、避けたりかわしたり、大半はルイーシュが処理してくれた。

最初は気づかれなかったが、さすがに相手は『禁忌の黒魔導書』。

やがて、ルイーシュの魔法が何であるかに気づいた。

「…貴様、その魔法…。空間魔法だな?」

「え、違いますよ?」

「いや、当たりじゃん…」

図星突かれたのにしらばっくれるとかお前。

そこは潔く認めろよ。

そう。ルイーシュの魔法は、空間魔法。

何じゃそりゃ、と思われるかもしれないが…これが実は、非常に高度な魔法なのである。

空間魔法は、時魔法の次に難しいと言われている魔法。

使うには術者を選ぶし、並の魔導師ではろくに扱えない。

ルイーシュが得意とするのは、そんな空間魔法であった。

ルイーシュの空間魔法の実力は、ルーデュニア聖王国でも随一だ。

あの学院長ですら、「空間魔法だけはルイーシュ君に敵わない」と言うほど。

こんなやる気のなさそうな、気の抜けた男ではあるが。

これで、実力だけは桁外れなのだ。

さっきから、ファントムの攻撃が「消されて」いるのも、ルイーシュの空間魔法によるものだ。

ルイーシュは、俺とファントムの間に亜空間を作り出し、そこにファントムの攻撃を転送しているのである。

言うは易しだが、いざそれをやれと言われると、まず無理だ。

少なくとも、普通の魔導師では無理。

シュニィくらいのレベルになって、ようやくその真似事が出来るくらい。

いかに難しいか、分かるだろう?

ただ亜空間を作り出すだけなら、出来ないことはないけれど。

自由自在に、好きなところに好きなときに好きな大きさの空間をぽっと作り出して、ぽっと消して、またぽっと出して、なんて…そんな変態じみた魔法が使えるのは、ルイーシュくらいだ。

「まぁ良いや。ネタが割れたとして、あなたに何が出来るんです?」

「…簡単だ。貴様を…先に殺せば良い」

「わーこわーい。キュレムさん守ってください」

「ったく…。守ってやるからちょっと下がってな!」

俺は、一瞬だけルイーシュに目配せした。

『禁忌の黒魔導書』を倒すには…アレをやるしかない。

俺の意図が通じたのか、ルイーシュは「めんどくさっ」みたいな顔をしたが。

それくらいやらなきゃファントムは倒せないと観念したのか、やれやれ、という風に溜め息をついた。

よし、宜しく。

俺だって疲れるんだから我慢しろ。