この攻撃は、ファントムも予想外だったらしい。

まともに食らって、超痛そうだった。

そりゃまぁ痛いだろう。

普通の弾丸じゃない。魔力をたっぷりと込めた特別製なのだから。

「貴様…!小賢しい真似を…」

「な?小賢しいだろ?」

それ、褒め言葉だから。

俺としては、むしろ喜ぶところだな。

「っ、この…!」

鬱陶しいハエでも払うかのように、負けじと魔力の弾丸を撃って、応戦してきたが。

「はいはい、それはさよなら~」

全部、ルイーシュが杖を一振りして「消して」しまった。

これはこれでチートだよなぁ。

向こうからしたら、攻撃をかわされるどころか、消されてしまっているのだから。

そりゃ納得行かないだろう。

「また…!貴様、何をした!?」

「いや、答えるはずないじゃないですか敵に向かって。アホなんですか?」

煽るなって。

案の定ぶちギレたファントムは、禍々しい魔力を更に増した。

「…小賢しい魔導師共…!」

あーあ…。絶対怒らせたよこれ。

見よ、我が真の姿…!みたいになっちゃった。

「どうすんだよルイーシュ…。お前が煽るから…」

「本当。困りましたね。宜しくお願いしますね、キュレムさん」

丸投げかよ。

思えばこいつは、いつもそうだった。

学生時代から、俺達はその魔法の特殊さ故に、二人でペアを組んで行う実技では、お互い余り者同士、消去法で組まされたものだ。

そしてそういうとき、俺達は負けなしだった。

他の人と組みたいな~、よし今回こそは他の人と、と思っても。

何故か、俺の隣にいるのはこいつなのだ。

何でなんだろうな?もう考えるのやめたよ。

全くルイーシュと来たら、毎回敵を煽るだけ煽って、いい感じに相手がキレたら、俺に丸投げしてくんだもん。

じゃ、キュレムさん後は宜しく、って。

宜しくじゃねーよ。おめーが煽ったんだからおめーがやれ。

と、毎回思いつつ。

「…仕方ねぇ。ルイーシュ、サポート任すよ」

「はーい。お任せ」

毎回付き合ってやるのだから、俺も優しいよなぁ。

相手が『禁忌の黒魔導書』なら、こちらも出し惜しみはしていられない。

珍しく、全力で…やらせてもらおう。