あまりに唐突のことで、俺もルイーシュも止められなかった。

「がっ、ぐ…!な、なん…で…」

グリードは、首を絞められながら声を絞り出した。

「何故だと?それが我らの契約だったではないか。お前は自分を苦しめた男達に復讐がしたかったんだろう…?故に、私はお前に言われた通り…五人を捕らえた。復讐は既に完遂された」

「…!」

「だから次は私の番だ。お前は言ったな?復讐が果たされれば、その魂を私に差し出すと。…約束通り、私に殺されてもらうぞ」

…そういうことか。

グリードみたいな無能が、『禁忌の黒魔導書』と契約出来たのは…。

始めからグリードは、ファントムにとって燃料タンクとしか思われていなかった。

それがこの二人の当初からの取り決めで、二人が合意の上で契約を交わしたのなら…俺達に首を突っ込む権利はない。

悪いのはグリードなのだから、俺達は何も言わず、グリードがファントムに吸収されるのを見守るべきなのかもしれない。

だが。

「…そういう訳にもいかないんでなぁ!」

俺は渾身の蹴りを繰り出して、ファントムを吹っ飛ばした。

「…っ…何をする!邪魔をするな!」

「するに決まってんだろ!グリードが馬鹿で無能でどアホなのは事実だが…それはそれなんでな!」

「そもそもあなたを回収するのが、我々の仕事ですからね」

ルイーシュが、グリードの襟首を掴んで後ろに放り投げた。

扱いが雑。

「さぁ、そっちこそ大人しく、俺達に封印されてもらおうか」

「…小賢しい」

ファントムは、魔力の弾丸を飛ばしてきたが。

「ほいっ」

ルイーシュが、それらの全てを綺麗に「消した」。

敵の攻撃は、全部ルイーシュに任せておけば良い。

「…!?お前、何をした…?」

「さ~て、何をしたんでしょうね~。当てたら褒めてあげますよ?」

煽っていくスタイル。

「ふざけるな!」

怒りの沸点が低いらしいファントムは、苛立ち紛れに魔力の刃を振りかざしたが。

それは駄目。

「さぁ、こっちも行くぞ」

俺は、かつてシルナ・エインリー学院長から渡された武器を…二丁拳銃を、ファントムに向けた。

「…魔弾、装填」

魔力をたっぷりと込めた魔弾を、弾倉に入れ。

引き金を引いた。