イーニシュフェルト魔導学院は、それまで通っていた学校が幼稚園に見えるほど、レベルの高い学校だった。

最初こそついていくのが大変だったが、じきに授業にも慣れた。

それに、イーニシュフェルト魔導学院の生徒は、割と優しかった。

アルデン人である私を、いじめようとはしなかった。

仲良くしてくれた訳ではない。話しかけてくれた訳でもないけど…でも、これまでのように、暴力を振られたり、暴言を吐かれることはなかった。

精々、無視されたり、敬遠されるくらい。

これまで過ごしてきた場所を思えば、天国のようだった。

授業のレベルも高く、始めこそ戸惑ったものの、段々と慣れていった。

むしろ、今まで本で読んだだけで、実践出来ていなかった魔導理論を初めて実践出来たことで、知的好奇心が高まった。

私には友達もいないし、アルデン人であるせいで、ただ生きていくだけでも困難なのだから。

せめていっぱしの魔導師になって、聖魔騎士団に入って、細々とでも生きていけたら良い。

私はイーニシュフェルト魔導学院に来て、初めて将来のことを考えた。

誰もが思い描くような壮大なものではなかったが、私はそれで充分だと思った。

私がいても迷惑でないと言ってくれる場所があるなら、そこにいられれば充分幸せだ。

…その、はずだったのに。

私がイーニシュフェルト魔導学院に来て、三年が過ぎた頃。

彼が、学院にやって来た。