俺はルーデュニア聖王国の名門貴族、アルテミシア家の長男として生まれた。

アルテミシア家は、代々聖魔騎士団魔導部隊に所属する魔導師を輩出する名家だった。

従って、俺は生まれながらに将来を決められていた。

将来はイーニシュフェルト魔導学院に入学して、立派な魔導師になる。

それ以外の道なんて、俺は選ぶことも許されなかった。

しかも俺には、それなりの才能があった。

幼い頃から、人一倍、いや人五倍くらいは魔法が得意だった。

俺が生まれた二年後に弟が生まれ、その弟も魔導適性があって、そこそこ優秀だったのだけれど。

弟よりも、ずっと俺の方が優秀だった。

誰からも期待され、皆から羨望の眼差しで見られた。

そしてあの頃は、俺も…その期待に応える為に必死だった。

あの頃の俺は、今みたいにやる気がないなんてことはなかった。

折角皆が期待してくれてるんだから、それに応えたい。

その期待に応えることは、俺の義務だとすら思っていた。

何もかもに必死だった。

何事にも、手を抜くなんて有り得なかった。

弛み無い努力と研鑽の積み重ね。

それが、俺という人間を作っていた。

あの頃のままの俺だったら、今でもあんな風に、何事にも必死だったのだろうか。

いや…多分、長くは続かなかったんじゃないだろうか。

期待されているから。

皆俺の才能を信じてくれているから。

それだけで生きていけるほど、甘くはない。