それから、私はイーニシュフェルト魔導学院に転校した。
王都に来るのは、生まれて初めてだった。
シルナ学院長は、とても不思議な人だった。
アルデン人である私を、平気で学院に受け入れてくれた。
しかし、私にはイーニシュフェルト魔導学院に入る為のお金がなかった。
身寄りのない私には、お金を借りる宛もない。
恥ずかしかったが、私はシルナ学院長にそのことを打ち明けた。
「あの…学院長、私…」
「うん?何?」
「私、お金持ってないですから…。学校には…」
入れないんです、と言おうとした。
だが。
「あぁ、大丈夫だよ。そういう生徒の為に、奨学金制度があるから。奨学金って分かる?」
「は、はい」
聞いたことならある。
保証人もつけられない私には、何の縁もないと思っていた。
「卒業したら返してくれれば良いからね。大丈夫」
「…!」
まさかこのときの奨学金が、学院長のポケットマネーから出ているとは、このときの私には知るよしもなかった。
ちなみに私は、未だにこのとき借りた奨学金を返していない。
卒業してから返そうとしたのだが、学院長が、
「あぁ、シュニィちゃん最優秀生徒だから、学費免除だよ。奨学金も返さないで良いから」と言って、頑なに受け取ってくれなかった。
私としては、申し訳ないのでどうしても返そうとしたのだが。
しばらく押し問答した結果、結局受け取ってもらえず、仕方ないので、後日母校への寄付金という形でお金を送った。
「でも…私、アルデン人なのに…」
あのときの私…今もだが。
私はアルデン人であることを、酷くコンプレックスに感じていた。
アルデン人であるという理由だけで、お店で物を売ってもらえなかったり、そもそも立ち入りすら禁止された公共施設もあった。
今住んでいる王都ではそういうことはないが、私がそれまで住んでいたのは田舎だったので、価値観が古いままだったのだ。
しかし、学院長は全く気にしていないようで。
「アルデン人だから何?君が魔導師として、優れた才能を持っていることに変わりはない」
「…」
「大丈夫。君はきっと、アルデン人であるというだけで、辛い思いをたくさんしてきたんだろうけど…」
学院長は、笑顔で私の頭にぽん、と手を置いた。
「いつかきっと、ありのままの君を愛してくれる人が出来るよ。いつか必ずね」
「…はい…」
私は、曖昧に返事をした。
本当にそんな人が出来るなんて、信じていなかった。
素直にそんな言葉を信じられるほど、生易しい人生を送ってきた訳じゃなかった。
王都に来るのは、生まれて初めてだった。
シルナ学院長は、とても不思議な人だった。
アルデン人である私を、平気で学院に受け入れてくれた。
しかし、私にはイーニシュフェルト魔導学院に入る為のお金がなかった。
身寄りのない私には、お金を借りる宛もない。
恥ずかしかったが、私はシルナ学院長にそのことを打ち明けた。
「あの…学院長、私…」
「うん?何?」
「私、お金持ってないですから…。学校には…」
入れないんです、と言おうとした。
だが。
「あぁ、大丈夫だよ。そういう生徒の為に、奨学金制度があるから。奨学金って分かる?」
「は、はい」
聞いたことならある。
保証人もつけられない私には、何の縁もないと思っていた。
「卒業したら返してくれれば良いからね。大丈夫」
「…!」
まさかこのときの奨学金が、学院長のポケットマネーから出ているとは、このときの私には知るよしもなかった。
ちなみに私は、未だにこのとき借りた奨学金を返していない。
卒業してから返そうとしたのだが、学院長が、
「あぁ、シュニィちゃん最優秀生徒だから、学費免除だよ。奨学金も返さないで良いから」と言って、頑なに受け取ってくれなかった。
私としては、申し訳ないのでどうしても返そうとしたのだが。
しばらく押し問答した結果、結局受け取ってもらえず、仕方ないので、後日母校への寄付金という形でお金を送った。
「でも…私、アルデン人なのに…」
あのときの私…今もだが。
私はアルデン人であることを、酷くコンプレックスに感じていた。
アルデン人であるという理由だけで、お店で物を売ってもらえなかったり、そもそも立ち入りすら禁止された公共施設もあった。
今住んでいる王都ではそういうことはないが、私がそれまで住んでいたのは田舎だったので、価値観が古いままだったのだ。
しかし、学院長は全く気にしていないようで。
「アルデン人だから何?君が魔導師として、優れた才能を持っていることに変わりはない」
「…」
「大丈夫。君はきっと、アルデン人であるというだけで、辛い思いをたくさんしてきたんだろうけど…」
学院長は、笑顔で私の頭にぽん、と手を置いた。
「いつかきっと、ありのままの君を愛してくれる人が出来るよ。いつか必ずね」
「…はい…」
私は、曖昧に返事をした。
本当にそんな人が出来るなんて、信じていなかった。
素直にそんな言葉を信じられるほど、生易しい人生を送ってきた訳じゃなかった。