「さてと。じゃ、次はキュレム君。君には特別授業を…」

「…ねぇ、学院長」

「うん?」

馬鹿にされるのは慣れている。

自分だけが落ちこぼれで、無能で、ポンコツなのも慣れている。

この惨めさにも慣れている。

死にたくなるほどの惨めさにも。

でも、俺は聞かずにはいられなかった。

「何で、俺をイーニシュフェルト魔導学院に連れてきたんですか?」

「ふぇ?」

なぁ。いくらなんでもおかしいだろう。

学院長が何を考えて俺をここに連れてきたのか、さっぱり理解出来ない。

「俺には、イーニシュフェルト魔導学院でやっていけるだけの才能はない。こんな落ちこぼれの無能に、ここにいる資格はない。それなのにどうして、俺をここに連れてきたんですか?」

他の優秀な生徒の、踏み台にする為か?

それとも、笑い者にする為か?

もう、そうとしか思えないじゃないか。

惨めなのには慣れている。馬鹿にされるのも。

だけど、そんな俺でも…いくらなんでもいい加減、死にたくなるよ。

「キュレム君…」

「…もう帰してくださいよ。故郷に」

故郷に帰っても、俺を待つものなんて何もないけどさ。

いつまでも不相応な場所にはいたくない。

しかし。

「…キュレム君。君…自分に才能がないと思ってるのかもしれないけど…。君は、むしろ天才の類なんだよ?」

「…は?」

…何?今何か言った?

「ねぇ、キュレム君。君はこの学院の教師が、全員私であることに気づいてる?」

「は?勿論」

「あ、やっぱり…」

やっぱりって何が?

ってか、気づかない人って、いるの?