「…」

「あなたも補習の補習ですか。ってことはポンコツなんですね」

「…」

「まぁ俺もなんですけど。あー良かった一人じゃなくて。二人いたら、なんか傷の舐め合い出来そうで良いですよね」

「…」

「でもこういうときに二人だと、表向きは、『俺達似た者同士の仲良しだよね~』って言うんですけど、腹の中では『少なくともこいつよりはマシだな』って思うのが人間ってもんですよね。持久走だって足遅い二人が『一緒に走ろうね』って言ってても、ゴール近くになったら抜け駆けするでしょ?人間の闇ですよね」

「…うん…」

…いるよな。持久走で。

二人で一緒に走ろうと約束した奴らが、本当にゴールまで一緒に走ってることって、あんまりないよな。

口では「ビリでも良いもん」なんて言いつつ、本当にビリなのは嫌なんだよ。

そういうもんだよ。

…で。

「…お前誰?」

何でここにいるの?

ここ、補習の補習対象者の訓練場なんだけど。

「あなたと同じ。補習の補習を受けに来たんですけど」

「えっ…」

…一人だけじゃなかったのか?

もう一人いる?

「あなた今、安心したでしょ。『あ~俺一人じゃなかったんだ~』って」

「うん。勿論」

「そうですか。俺も思ったんでお互い様ですね」

そうだね。

…と、まぁ言うまでもないが。

このときここで出会ったのが、ルイーシュである。

ルイーシュ・レイヴン・アルテミシア。

まさか俺は、このときここで出会った男と、この先何十年、何百年以上もペアを組み続けることになるとは思っていなかっただろうな。