俺だって、あまりに不当な扱いに文句を言ったこともある。

そりゃ確かに兄貴の方が優秀だけどさ。

だからって、こんな差別はあまりにもやり過ぎじゃないか。

俺だって、何一つ努力してない訳じゃないよ。

ただ、生まれながらに才能の差があるってだけで。

でも、俺が何を言っても、その言葉が届くことはなかった。

ハイハイ無能の言い訳wとあしらわれて終わり。

惨めだった。

心の底から惨めだった。

多分俺は、一生このまま兄貴の影に隠れて、兄貴のおまけとして馬鹿にされる人生なんだろう。

優秀で、誰からも認められて、皆に頼りにされる兄貴を、一生憎々しげに睨み続けるしかないのだろう。

キュレム・エフェメラルじゃなくて。

優秀な兄貴の無能な弟として、生きていくことになるのだろう。

それが、俺の運命なのだ。

なんて下らない人生だろう。なんて惨めな人生なんだろう。

どうせこのままパッとしない人生を送るだけなら、もういっそ死んだ方が楽なんじゃないかと思った。

俺が死んだところで、困る人なんていないんだからさ。

本気で、そんなことを考えていた。

イーニシュフェルト魔導学院の学院長が視察に来る、なんて話が流れ始めたのは、その頃だった。