──────…気を取り直して。

「おらっ!さっさと出ろ!甘えてんじゃねぇ!つーかマジ臭いなお前。頭から洗剤ぶっかけて、デッキブラシで丸洗いしてやろうか!」

ずるずる、とグリードの身体を無理矢理引きずる。

グリードは意地でも部屋から出まいと、ベッドの足に醜くしがみついていた。

こいつ、引きこもりニートの分際で、結構力強いじゃねぇか。

「やめてっ…。やめてあげて!そんな乱暴な…」

追いかけてきたグリード母が、泣きそうになりながらそう叫んだ。

乱暴だと?

うん、それは認める。

これが学院長なら、じっくりとグリードと話をして、説得して、グリードが自分から外に出るように励ますのだろうが。

そして、それが本来正しいやり方なのだろうが。

悪いが、俺は学院長ほど優しくないんでね。

引きこもりなど、無理矢理窓から突き落とせというのが教訓。

窓から突き落としてないだけ、俺はまだ優しい方だ。

「離せ!嫌だ!僕は外になんて出ないぞ!」

グリードは、必死にそう叫んだ。

声出るじゃねぇか。

「うるせぇ!学生時代いじめられてただぁ?ママが助けてくれなかっただぁ?そりゃ災難だったな!同情するよ!さぞや辛かっただろうな!」

「そこは同情してあげるんですね。キュレムさん」

当たり前だ。気の毒だと思うよ、そこはな。

引きこもりたくなるのも、そりゃ分かる。

「でもなぁ、お前のそれは病気でも何でもない。ただママの弱味に付け入って、甘ったれてるだけなんだよ!」

「う、うるさい!違う!」

「違わねぇよボケ!カス!外出ろ。動け糞ニートが!」

「キュレムさんも、めちゃくちゃ口悪いじゃないですか」

あ、ごめん。

ルイーシュのこと言えねぇわ。

「離せ!離せ!お母さん、助け…」

呆れたことに、グリードは母親に助けを求めた。

こ、んの糞馬鹿。

「お前の悪いところはなぁ、そこで散々殴って、偉そうに振る舞ってきたママに助けを求めるところなんだよ!お前のオツムにゃプライドのプの字もねぇのか!」

「さすがに俺もドン引きですよ。28にもなって、ママ助けて~ってあなた…。あ、ごめんなさい。実は28歳じゃなくて、精神年齢2.8歳の間違いでした?」

ルイーシュも超煽っていく。

三歳でももう少し賢いわ。

「おらさっさと出ろ!そんだけ力あったら働けんだろうが!」

「うるさい!お、お前なんかに何が分かるっ…。皆にちやほやされて、ぬくぬく生きてきたような奴に、僕の気持ちが分かるもんか!」

「あ゙…?」

皆にちやほやされて…。ぬくぬくと…だって?

「そ、そうなんだろ?違うってのか?僕の辛さが少しでも分かるのか!?生まれてからずっと、順風満帆な人生を歩んできたような奴らに、僕のきも、」

ボコッ、と。

グリードの顔面に、俺の鉄拳が突き刺さった。