「…よし。ルイーシュ、行こうか」

「ですね」

「…?」

俺達の意図を図りかねたのか、首を傾げるお母さん。

うん。

一応、了解くらいは取っておくべきかな。

「…お母さん。自分達、さっきも言った通り聖魔騎士団の魔導部隊でして」

「は、はぁ」

「捜査の一環で。どうしても。仕方なく。強引でもやらないといけないんですね」

「…?」

「…そんな訳なので」

俺達は、にこやかに立ち上がり。

そして、客間を飛び出して二階に駆け上がった。

「えっ!?」

グリード母は、死ぬほど困惑していたが。

無視だ。

二階。長年固く閉ざされたその部屋。

グリードの楽園に、俺達は容赦なく踏み入った。

「出てこいや引きこもりがぁぁぁっ!!」

「うわぁぁっ!?」

中にいたグリードは、驚いて飛び上がった。

いきなり楽園に人が入ってくれば、そりゃビビりもするだろう。

「お前この、良い歳して、元気な癖して、親の脛齧って、親を殴って、恥ずかしくねぇのか!つーかこの部屋くっさ!おっさんの臭いがする!」

「家主おっさんですからね。十年以上たっぷりと熟成させた、濃厚なおっさん臭が…」

「キモい言い方をするな!」

吐き気がしてくるだろうが!

「な、何なんだよお前達は…人の部屋にいきなり…」

怯えて後ずさるグリードの胸ぐらを、俺はがっちりと掴んだ。

「うるせぇ!いい加減にしろよお前。いつまでも甘ったれるんじゃねぇ!髭を剃れ!頭を刈れ気持ち悪い!何だ、その寝起きのシルナ学院長みたいな寝惚けたツラは!」

「シルナ学院長に失礼では?」

あ、ごめんつい。