グリード・テラダスが、十年を越える歴戦の引きこもりニートであることに加え。

母親に暴力を振るうクズであることも発覚した。

「は~ぁ。俺達は禁書の調査に来ただけなのに、何で引きこもり馬鹿ニート息子を持つ母親の、人生相談を受けなきゃならないんだろうな…」

「…ルイーシュ。言うな」

同じこと思ったけど、本人の前で言うな。

こういうのは俺達じゃなくて、シルナ学院長のジョブだよな。

あの人なら、説得して、見事更正させそうだよ。

「あなたも、何でやられっぱなしなんですか?そりゃ力では勝てないでしょうが、やりようはいくらでもあるでしょう」

まぁね。

情がないなら何でも出来るだろう。

ルイーシュが言うように、無理矢理家から叩き出すとか。何がなんでも飯作ってやらんとか。

しかし。

「…私、あの子が中学生のとき…。いじめられてたとき…助けてあげられなかったんです」

グリード母は、泣きそうな顔で俯いた。

「あの頃は私も仕事が忙しくて…。息子のSOSに気づいてあげらなかった。いじめられてる、ってはっきり言ってたのに…。気のせいでしょ、って切り捨てて…」

「…」

「こんなことになるなんて思ってもみなくて…。あの子を傷つけて…。そのときのことを、息子もまだ根に持っていて…」

「…」

「外に出ようとか、人に会ってみようと誘っても…何を言っても、『また俺を投げ出すのか』って言われて…。私、言い返せなくて…。あの子が何より助けを求めていたときに、何もしてあげられなったから…」

「…」

「…済みません」

「済みません三丁入りましたー!」

いちいちそれ言わなくて良いから。

成程ねぇ…。

中学のとき、息子を助けてあげられなかったことを負い目に感じているから、それで息子に強く出られない。

殴られようが暴言吐かれようが何されようが、こうやって済みませんごめんなさいと謝って、息子の言いなりになるしかないと。

「あなたの息子はクズですけど、あなたも相当ですね」

ルイーシュは相変わらず、容赦がない。

そりゃそうだけど、それを本人に言うなって。

「私が悪いんです。私が仕事にかこつけて、息子を蔑ろにしたから…」

「えぇ。あなたも悪いですけどそれ以上に、あなたの息子もクズですから。クズがクズを庇っても、目糞が鼻糞庇ってるのと変わらな、」

「ルイーシュ。口の悪さを何とかしろ」

言葉遣いには気を付けましょうって、学院長がよく言ってただろ。

でもそう言いたくなる気持ちは分かる。

物凄くよく分かる。

で。

その上で、俺達がやることは一つだ。