「へへっ、ざまぁみろ。ざまぁみろ…!」

男は、私の遠隔魔法で「監禁室」の様子を眺めながら、嬉々として呟いていた。

まるで、面白い映画でも見ているかのようだ。

グリードの視線の先にあるのは、「監禁室」で苦しむ五人の男達の姿だった。

彼らは出口のないあの部屋に閉じ込められ、もう何日も、最低限の水と食糧だけで生かさず殺さずの状態だ。

これは復讐なのだ。

グリードの…私の主の復讐。

この男は、この下らない復讐の為に、私との契約を承諾した。

私に出会うまでグリードは、暗くて狭い部屋の中で一人ぼっちだった。

家の外に出ることは勿論、部屋の中からも滅多に出なかった。

食事やその他の必要なものは、全てグリードの母親が、部屋の前まで持ってきた。

気の毒なグリードの母は、28にもなった息子が全く部屋から出てこないのを憂いて、何度も声をかけたり、励ましの言葉をかけたけど。

グリードはその言葉を、暴力で返した。

そして、ただひたすら自分の過去を嘆き、被害者の顔をして、妄想の中で生きていた。

そんな人間のクズと、私が契約を交わしたのは…一つの約束の為だ。

グリードは言った。

「もしも自分の人生を狂わせた男達に復讐が出来るなら、この命を捧げても構わない」と。

だから、私は契約した。

この男の不毛な復讐に付き合い、見事達成した暁には、この男の命をもらう。

魔導適性はないものの、この男の潜在魔力はかなりのものだ。

その魔力を全て吸収すれば、私は飛躍的に力を増す。

無論、この男だけの魔力では、奴には到底敵うまいが…同じように何人かの魔力を吸収すれば、いずれ奴にも対抗出来る。

そして、忌々しい封印を解き放ち、「禍なる者」を復活させるのだ。

それこそが、我ら『禁忌の黒魔導書』の悲願。

「ざまぁみろ…!これが報いだ…!」

「…」

愚かな人間め。

今は、無邪気に喜んでいると良い。

お前は我らの神が再びこの世に降臨する、その礎となるのだ。