こうして、急遽南方都市、シャネオンに向かうことになった俺達。

長旅になるので、スーツケースに荷物を詰め、汽車に乗って、いざ出発。

…したのだが。

「駅弁って良いですよねぇ。汽車の中で食べるから美味しいんでしょうね。これ、普通の食料品店で売ってたら誰も買いませんよ。駅で売ってるから何だか美味しそうに見えるんでしょうね」

「…」

「あ、キュレムさんだし巻きもらいますね」

「は?おい貴様」

誰のだし巻き玉子を勝手に強奪してんだ。

喧嘩勃発する案件だぞ。

「代わりに俺の煮豆あげますよ」

「やめろ」

勝手に入れてくるな。

「はぁ~ぁ…。それにしても陰鬱な天気ですねー。南方都市って言うんだから晴れてるもんだと思ったら、この曇天。気分悪くなりますよ」

人から掠め取っただし巻き玉子を食べながら、窓の外を眺めるルイーシュ。

「…」

「さっきから黙ってどうしたんですか。お腹でも痛いんですか?」

「いや…。先行きが不安なんだよ。こんなマイペースな男と二人で任務なんて、悪夢だな~と思って」

「あぁそうですか。まぁあなたマイペースですもんね」

「お前だ」

誰が自分のことを言ってるよ。

な?もうこのやり取りからして、こんな奴と二人きりで任務なんて溜め息出るだろ?

「今更何を言ってるんですか。何だかんだ今までず~っと、俺のお守りはあなたがしてきたでしょう」

お守りされてる自覚はあんのな。

殊勝な心掛けだ。

だが、ルイーシュの言う通り。俺は今まで、学生時代に初めて会ったときから、ずっとルイーシュのお守りをさせられてきた。

何だかんだと俺の隣には、いつもルイーシュがいた。

別に俺がそう望んだ訳じゃない。

運命の女神様が仕組んだかのように、俺の隣にルイーシュがやって来るのだ。

「言っとくけどこっちだって嫌なんだからな。どうせなら若くて可愛い美少女と仕事してぇよ」

「いや、それあなたは良いとして、美少女が可哀想でしょ」

「どういう意味だコラ」

な?もう終始こんな感じなんだもん。

先行きが不安になるのも分かるだろう?