続くLさんとMさんも、JさんKさんと似たような感じ。

特にこれと言って大きな家出の理由もなさそうなのに、ここ二ヶ月の間に突然失踪していた。

一人二人ならまだしも、性別、年代が同じ人間が四人もいなくなっているということで、これは何かの事件ではないかと、聖魔騎士団に報告が来たと…。

この程度の案件なら、俺達大隊長クラスが出る幕ではない。

しかし、シュニィが懸念しているのは。

「今回の事件、『禁忌の黒魔導書』の仕業である可能性があります」

…まぁ、そうなるよなぁ。

『禁忌の黒魔導書』が行方不明の今、些細な事件でも見過ごすことは出来ない。

充分に警戒すべきだろう。

「そこで、ここにいるどなたかに、この事件の調査をして頂きたいのですが…」

と、シュニィが会議室に集まったメンツを見渡すと。

まず一番に声をあげたのが、アトラスであった。

「よし。なら俺が動こう」

おいおい。聖魔騎士団団長自らかよ。

「アトラスさんは駄目ですよ。騎士団長が王都を留守にしては…」

「立場は関係ないだろう。俺だって聖魔騎士団の一員であって…」

でもお前魔法使えないから、禁書相手はキツいんじゃね?と言おうとしたが。

シュニィが、それ以上にアトラスに効果的な一言を言った。

「王都を出たら、しばらくアイナに会えませんよ?」

「なっ…!」

…決定的だな。

愛娘と離れ離れになるのは嫌だったのか、アトラスはぶるぶると震え、そして。

「…済まん。誰か俺の代わりにシャネオンに行ってくれ…。頼む…」

娘を取った。

そうか。まぁお前はそうだろうな。

「よし。そういうことなら私が行こう。ねっ、羽久」

次に名乗りをあげたのは、学院長であった。

しかし。

「却下」

羽久が、バッサリと切り捨てた。

「な、何で?」

「最近立て続けに忙し過ぎだから。しばらくはシルナの顔を見ずに王都でのんびりしたい。シルナの顔を見ずにのんびりしたい」

「酷い!二回も言わないで!」

よっぽど顔を見たくないらしい。

「確かに…学院長は学院を再開したばかりですからね。しばらくは王都にいた方が良いでしょう」

「うぅ…。そっか。じゃあ今回は他の子にお願いするね」

それが良いだろう。

で、次に名乗りをあげたのが。

「では、私が行きます」

期待の新人、クュルナであった。

クュルナは優秀だし、任せても問題ない逸材だとは思うが…。

「さすがにクュルナにはまだ早過ぎるんじゃないか?」

「…!大丈夫です。必ず事件を解決してきますから」

実力を疑れていると思ったのか、クュルナは抗弁してきたが。

別に実力を疑ってる訳じゃない。

「そうじゃなくて、まずは王都での仕事をマスターするのが先じゃないか、ってこと。クュルナの実力を疑ってる奴なんていないよ」

と、羽久が言うと。

「そ…そうですよね!分かりました。では、私は羽久さんの傍に…王都に残ります」

クュルナは、途端に聞き分けが良くなった。

甘酸っぱっ…。

大変甘酸っぱくて結構。だが。

そうなると…。