「今のところ、失踪した男性は四名。まず一人目のJさんは、二ヶ月前、勤務先の港から帰る途中に失踪。夜になっても帰ってこない為、家族が捜索願いを出したそうです」

ふむ。

「それは…家出とかではなく?」

「勿論考えられますが、その可能性は薄いかと。Jさんは特に借金もなく、仕事も順調で、家族仲も良く…子供もいて、四歳の娘が一人と、奥さんのお腹にもう一人子供がいるそうです」

成程。幸せの真っ只中、って奴だった訳ね。

すると、娘、の一言にアトラスが反応した。

「何?娘が…。成程、家出は考えられないな。可愛い盛りの娘がいるのに、家を出たい訳がない」

説得力が違うな。

「更に、人間関係も良好で、学生時代から友人も多かったそうです」

陽キャかよ。

まぁ20代で奥さんと、子供が二人もいるって言うんだから…少なくとも奥手ではないよなぁ。あんまり。

「家族が言うには、誰かに恨みを買っていたなんてことも考えられないと…」

まぁ、私何々さんに恨みを買ってます!って宣言する人もいないだろうからね。

恨みってのは、自覚して買うときもあるが、時として知らないうちに買ってしまうこともあるものだから。

誰からも好かれて…なんて言いながら、影では恨まれてることもあるかもしれない。

「失踪当日も、いつもと変わった様子はなく…本当に、忽然と消えたという感じで…。家族も職場の同僚も困惑しているようです」

「成程…。それじゃ、二人目の失踪者は?」

と、学院長。

「二人目の失踪者はKさん。失踪したのは一ヶ月半前。こちらも、職場からの帰り道に失踪しています。彼も家族仲は良好で、まだ子供はいませんが、奥さんと結婚したばかりだったそうです」

「嫁と結婚したばかり…。成程、それも家出は考えられないな。愛する嫁と結婚したばかりなのに、家出したいなんて有り得ない」

何処までも真剣な表情のアトラスである。

「…アトラスさん。ちょっと静かにしててください」

恥ずかしそうに怒るシュニィ。

幸せカップルで何よりだよ。

アトラスには悪いけど、結婚したばかりの夫婦が上手く行かないのは、ままあることではないのか。

愛する女と結婚したけど、一緒に暮らしてみたら相性最悪だった、なんてのはよくある話。

こっちのKさんに関しては、家出の可能性アリだな。