クュルナが、一体何でここにいる?

「ぬぁ!?君王都から出てったんじゃなかったの?」

キュレムもびっくりである。

「はい。そのつもりだったんですが…」

「何で、戻ってきた?」

「…私も、聖魔騎士団魔導部隊に入れてもらいたいと思いまして」

…何だと?

今、何て言った?

「入隊試験があるのなら、私、受けます。禁書との契約が解けても、そこそこの実力はあることを証明…」

「いや…そこは全く心配してないけど」

カオスの力を差し引いても、クュルナの実力は本物だ。

俺やシュニィと良い勝負が出来るくらいの実力はある。

しかし。

「魔法はもう使わないって言ってたじゃないか。魔導部隊に入ったら、どうやっても魔法は使わなきゃならないんだぞ?」

魔法を使わず、過去に折り合いをつけて生きていくんじゃなかったのか。

それなのに、何故また自らトラウマを彷彿させるようなことを…。

「…分かっています。でも私は…新しい目標を決めたんです」

「…目標?」

それは、辛い過去から身を守ること以上に大切なものなのか?

「はい。私は私の力で、今度こそ私の守りたいものを守ります。泣いているだけじゃ、前には進めませんから」

「…前に進むことが、正しいこととは限らない」

時には立ち止まって、涙を流しても良いはずだ。

それが出来る人間こそ、真に強い人間だと言えるんじゃないのか。

「分かっています。でも、もう決めたんです。私は魔導師として、生きていきます」

クュルナは、きっぱりとそう言った。

もう、決意を固めているらしい。

そこまで言うのなら止めないが…しかし…。

「…で、俺の部隊に入りたいってのは、何で?」

「え、いえ、それは、その…。あなたの傍に…」

さっきまで、あんなにハキハキと話していたのに。

何故か、突然しどろもどろになった。

…何で?

しかもそれを見たキュレムが、にま~とし始めた。

「ふひっ。これは恋のよか、もごもごもご」

「はいはいキュレムさん野暮ですからねー。ちょっと黙りましょうねー何なら永遠に黙ってましょうね」

「もごー!」

…この二人は何をやってんの?

「傍に…?って?」

「その、ですから…。そう、あなたの力になりたいんです。過去の楔から解き放ってくれたのはあなたですから。あなたに恩返しがしたくて…」

恩返し…。

別に返してもらうような恩を売ったつもりはないのだが。

「…と言っても、クュルナの実力なら、下につくんじゃなくて普通に大隊長になれると思うから、下にはつけないぞ」

「え、そうなんですか…」

ちょっとがっかりしてるクュルナ。

何でがっかり?嬉しいだろう大隊長。

「とにかく…そういうことなら、これから宜しく。クュルナ」

「…はいっ…。宜しくお願いします」

こうして、聖魔騎士団魔導部隊に、新たな仲間が増えた。


















END