─────…カオスと契約していたからとはいえ。

あれだけのことをした私は、当然重い罰を言い渡されるものと思っていた。

その覚悟もしていた。

しかし、私は何故か、あっさりと無罪放免されていた。

「さてと…。無事にクュルナちゃんも解放されたし、帰ろっかー」

「誰もお咎めなしで良かったな」

「本当に」

そう、お咎めなし。

一番裁かれなければならないはずの私まで…。

「それで…クュルナさんは、何処に引き取られるのですか?」

シュニィというアルデン人の女性が、そう尋ねた。

行く宛のない私は、無罪放免されても帰る場所がない。

私の押し付け合いが始まるのかと思いきや。

「良ければ、落ち着くまでうちに来ませんか?小さい子がいるので、少々騒がしいですが…」

「騒がしいけど、でも可愛いぞ!」

「アトラスさん。どや顔をやめなさい」

彼女達の家に?

更に。

「シュニィんとこじゃなくて、うちでも良いぞ!狭いけど!」

「キュレムさん部屋散らかってるじゃないですか…。来るならうちが良いですよ」

「ルイーシュが潔癖過ぎるんだよ」

け、潔癖って…。

それでも、こんな…私のような人間を受け入れようとするなんて。

しかも、学院長までが。

「いやいや。身元引き受け人私だからね?来るならうちだよ。ねぇ羽久」

と、申し出てくれたのだが。

羽久さんはジト目で睨んだ。

「お前ロリコンだから駄目に決まってるだろ」

「酷い!」

「大体もう魔法には関わりたくないって言ってるんだから、学院からは遠ざけるべきだろ。帝都からも離れた方が良い」

「あ、そっか…。じゃあ、私が身元保証人になって、帝都から離れた場所に家でも借りようか」

帝都から離れ。

魔導師ではなく、普通の人間として暮らす。

私にとっては、とても魅力的な誘いのはず。

しかし…心の中に、もやが残っていた。

「でも残念だよなぁ。クュルナって相当手練れの魔導師なんだろ?聖魔騎士団に来れば、戦力になっただろうに…」

残念そうにキュレムさんがそう言って、私はドキッとした。

そうだ。この人達は…皆、聖魔騎士団魔導部隊の魔導師なんだ。

「こら、キュレム。余計なことを言うな」

すかさず羽久さんが注意した。

「わ、分かってるよ。ちょっと言ってみただけだよ」

「…クュルナ。気にするなよ。自分の好きなように生きれば良いんだ」

「…はい」

自分の、好きなように。

私の…好きなように生きるのなら。