クュルナの罪は、カオスに押し付けることで解決した。

しかし、まだ残っている罪がある。

「…フユリ様」

シュニィが、厳かに声を上げた。

「私は、フユリ様からの命令だと偽って、証拠品の禁書を盗み見しました。その罪を、どうか罰してください」

そして。

シルナを助ける為に無理をしたのは、シュニィだけではなかった。

「俺もです。施設に侵入して、捜査資料を勝手に閲覧しましたから…言い逃れするつもりはありません」

吐月もまた、シルナの為に危険を省みなかった。

本来なら、二人共裁かれるべき行為だ。

特にシュニィは、勝手にフユリ様の名前を利用した。

王族に対する不敬罪にも当たる行為だ。

だが、これにはアトラスが抗議した。

「そんな!シュニィは…。二人は、学院長の無罪を証明する為に…!」

「良いんです。アトラスさん、これは私のけじめで…」

と、言いかけたシュニィを遮るように。

フユリ様が、

「…そういえば、シュニィさん。吐月さんも、ご苦労でしたね」

「…え?」

「あら、忘れましたか?私はあなた方に極秘任務を与えたはずですよ。『押収された証拠品の確認をしてきて欲しい』と。お陰で証拠品が偽物だと気づくことが出来ました」

「…!」

当然、フユリ様はそんな命令はしていない。

でも…二人が罪に問われないように、自分が命じたことにしたのだ。

「フユリ様…ありがとうございます」

シュニィもアトラスも吐月も、揃って頭を下げた。

「私も、シルナさんの無罪を証明する為に協力するつもりでしたから。このくらい、感謝されるようなことでもありません」

にっこりと微笑むフユリ様。

フユリ様が良い人で何よりだ。

「では、後のことは…クュルナさんのことは、シルナさん、あなたに任せますね」

「はい。確かに」

「あなたが無事に戻ってきてくれたこと、神に感謝します。本当に良かった…」

フユリ様にとっても、ルーデュニア聖王国にとっても…シルナは必要不可欠の存在だからな。

戻ってきてくれて良かった。

例え、シルナが何を隠していたとしても。