シルナが延々と回復魔法をかけ続けてくれたお陰で。

爆発の矢面に立たされた割には、俺は元気だった。

まだ多少怪我は残っているものの、動けないほどではない。

俺はシュニィ、アトラス、キュレムとルイーシュ、それに吐月に声をかけ。

シルナに付き添われ、全員で王宮に向かった。

フユリ様に、今回の事件の説明をする為だ。

俺達が訪ねていくと、フユリ様は待っていたと言わんばかりに通してくれた。

女王の直接裁判とばかりに、クュルナもその場に呼ばれた。

クュルナは、全てを覚悟した顔をしていた。

いかような判決が下ろうと、甘んじて受け入れる、という顔だ。

大変結構。

「羽久さん…。身体の方は、大丈夫ですか?」

フユリ様はまず、俺の身体を心配してくれた。

「はい。問題ありません」

「それなら良いのですが…。…結局、何があったんです?教えてください」

何があったのか…か。

俺は、シルナに目配せした。

小さく頷いて、シルナが一歩前に出た。

クュルナは、いよいよ裁きのとき、と覚悟を決めていたが…。

「…全ては、『禁忌の黒魔導書』が引き起こした悲劇だったんです」

シルナは、真剣な顔ですっとぼけた。

クュルナはぽかんとしていたが、気にせず畳み掛けた。

「事の発端は、そこにいるクュルナという少女に、『禁忌の黒魔導書』が無理矢理取り憑き、強引に契約したことでした。黒魔導書…カオスは、個人的に私に恨みを抱いていたようで…。私への復讐の為に、クュルナちゃんを脅して私を捕らえさせ、イーニシュフェルト魔導学院を閉鎖させようとしたと…」

「そ、そんなことは…!」

クュルナは、それは違う、と抗弁しようとしたが。

彼女の言葉を遮るように、シルナは続けて言った。

「カオスはクュルナちゃんの魔力を利用して、生徒や図書館職員の記憶の改竄や、禁書の偽造をして証拠品を作りました」

「おまけにクュルナが拒否した途端、クュルナを殺そうとしていました。それを、俺達が止めたんです」

俺はクュルナに抗弁の隙を与えず、畳み掛けた。

「…そういうことだったんですね。では、彼女は何も…」

「えぇ。彼女はただ、カオスに利用されていただけです」

シルナや他の皆と、ちゃんと示し合わせてきた。

クュルナではなく、カオスに全ての責任を負わせ、クュルナを解放させよう、と。

誰も異論は唱えなかった。

クュルナは過去と決別し、二度と魔法を使うことなく、平穏に生きていくのだ。

俺が、俺達が、それを叶える。

「分かりました。では、クュルナさんを釈放します。身元引き受け人は…」

「私が」

シルナがすかさず手を上げた。

このまま無罪放免になると思ったのか、クュルナは戸惑いながら声をあげようとしたが。

俺は、視線でそれを制した。

クュルナはハッとして、渋々口をつぐんだ。

そう、それで良い。

何でもかんでも背負う必要はないんだ。

過去は、いつか精算することが出来るんだから。