悪いが。俺とシルナと、シュニィに吐月までいるこの状況で。

いくら禁書の化身と言えど、太刀打ち出来るはずがなかった。

「…潔く封印されることだな」

俺達の前に姿を現したのが、そもそもの間違いだったのだ。

それでもカオスは抵抗するかと思ったが、意外にカオスは潔かった。

抵抗する代わりに、捨て台詞でも吐くようにこう言った。

「…シルナ・エインリーの手先が。誰も彼も…その男に騙されているというのに」

…あ?

「憐れな人間共。その男が何を企んでいるのかも知らず…」

「…精神攻撃のつもりか?悪いが、そんな戯言に騙される俺達じゃない」

そうでもなきゃ、シルナの冤罪晴らす為にここまでしねぇよ。

しかし。

「…知らないだけだ。お前達は、その男の正体を…」

「…黙れ」

俺は有無を言わせず、カオスに杖を向けた。

シルナの正体、だと?

知ったことか。そんなもん。

シルナが何者であろうと、俺達の味方であることに変わりはない。

「…憐れな人間だ。知ったとき、お前達は絶望するだろう」

「うるせぇ。さっさと死…」

「羽久!」

シルナが咄嗟に警告したが、遅かった。

カオスは、大人しく死ぬつもりなんてなかった。

死なば諸共。

にやりと笑ったカオスの内側から、爆発的な魔力が膨れ上がった。

自爆するつもりだ、と悟るなり、俺はクュルナを庇うように防壁を展開させた。

だが、正直間に合ったかどうかは、自信がなかった。