せっ…かく、良いところだったのに。

クュルナを上手いこと説得して、一人の少女の人生を救えたところだったのに。

何を邪魔してくれてんだ。この野郎。

「…何だ、貴様は。何故邪魔をする」

「それはこっちの台詞だ糞が。何我こそはラスボスみたいな顔して現れてんだ。空気読め糞が」

「…羽久。口が悪いよ」

横からぽそっ、と呟くシルナ。

あぁごめん。ちょっと今本気で腹立ててたから。

今目の前でシルナが反復横飛びしたら、確実に半殺しにするくらい機嫌悪いから。

「お前は誰なんだよ。『禁忌の黒魔導書』なんだろ」

「…いかにも。我が名はカオス。禁書の守り人にして、禁書そのものだ」

成程。カオスね。いかにも悪そうな名前だ。

こいつがクュルナを焚き付けて、シルナを逮捕させた訳だな。

よーく分かった。

「…よし。お前は死ぬべきだ」

俺は、何処までも私怨だったが。

「『禁忌の黒魔導書』は、聖魔騎士団が討伐します」

「…ベルフェゴール、おいで」

シュニィと吐月は、大変冷静だった。

偉い。

そして、シルナは。

「…君がいるとクュルナちゃんが苦しみ続けることになる。それは駄目だ」

こちらも割と冷静。

頭に血が上っているのは俺だけか。

「…首を突っ込むな。これは、私とこの女の契約…」

「知ったことか。魔法使いたくないって言ってるだろうが。ならもう二度と、その子に魔法は使わせない。クュルナが魔法を使わなくても、幸せに暮らせる世界にするんだよ」

「…!」

クュルナが、目を見開いた。

カオスは無言で、臨戦態勢を取ったが…。