「…あんた…本当は何をしたいんだ?そんな辛そうな顔して…魔導師をこの世から消したい訳じゃないんだろう?」

「…!それは…」

「分かってるはずだぞ。自分が何をしたいのか…」

自分が、何をしたいのか。

彼女は、泣きながら、震えながら声を絞り出した。

「わ、私は…もう、魔法なんて使いたくない。苦しみたくない。もう解放されたいだけなんです…!」

…そうだろうよ。

死者のトラウマから解放されたい。

魔導師がいなくなれば、辛い過去を忘れられると思ったんだろうが…。

そんなことをしても、余計辛くなるだけだ。

自分だって、他でもない魔導師なのだから。

悪いのは魔法じゃない。

彼女自身でもない。

そもそも誰一人、悪いことなんてしてないのだ。

強いて言うなら…運が悪かった。

才能に恵まれて生まれてしまったが故に、苦しむ羽目になった…。

「…なら、もう使わなければ良い。こんな回りくどい生き方をしなくても…。魔法を使わずに、普通の人間として生きれば良いんだ。重たいものは全部下ろして良い。誰も責めないよ」

誰が責める権利なんてあるものか。

彼女は、もう充分苦しんだのだから。

「普通の人間として…。私が…」

「そうだ。もう解放されて良いんだよ」

「…」

彼女は震えながら、杖を手放した。

これで、彼女は辛い過去と決別を、

「…それは契約違反だよ、クュルナ」

「!?」

クュルナと呼ばれた彼女の首に。

赤い爪が、がっちりと食い込んだ。