─────…死者蘇生の魔法、か。

魔導師にとっては永遠の夢…とも言える。

俺は別段死者蘇生になど興味はないが、古今東西あらゆる魔法を研究し続けているシルナにとっては、覚えがあるかもしれない。

案の定。

「…死者蘇生は禁忌の魔法だ。古来から何度も研究されてはいたけれど…。結局一度も成功していない」

シルナは、静かにこう言った。

…だろうね。

「結局、人間が触れてはいけない力として…死者蘇生の魔法は、ルーデュニア聖王国では研究することを禁じられている。…そうか。君も…上手く行かなかったんだね」

「…」

…まぁ、分かる気がする。

不慮の事故で亡くなった親友を取り戻す為に、死者蘇生の魔法に手を出し。

結局失敗して、生け贄として故郷の人々を全員死なせてしまい…。一人ぼっちになった。

己の魔法を憎み、魔導師を憎むのも…分からない訳じゃない。

そんな目に遭えば…仕方ない気がする。

だからって、イーニシュフェルトの閉鎖やシルナの逮捕を認めるつもりはない。

「魔法なんてなくなれば…。魔導師がいなくなれば…。あんな悲劇は…」

…起きなかった、か。

そりゃそうなのかもしれないけどさ。

でも、そうじゃないだろ。

「…確かに、魔法が人を傷つけることはある。殺すことも」

使い方を間違えなかったとしても、だ。

「でも…魔法が、人を救うことだってあるんじゃないのか?」

「…え?」

そんな、青天の霹靂みたいな顔をするなよ。

自分だって、そうしてきたんじゃないのか。

「あんたは確かに、魔法で人を殺したのかもしれない。でも魔法で人を助けたことだってあるだろう?それは無駄だったと?何の意味もなかったと?あんたはそう言うのか?」

「それは…。でも…助けた数より、死なせた数の方が…」

多いだろうね。そりゃそうだろう。

「間違えるなよ。憎しみの捌け口を」

この女、憎む相手を間違ってる。

悪いのは自分だと…そして、魔法そのものだと思ってる。

だが、それは大きな間違いだ。

「あんたはただ、助けようとしただけだ。魔法なんて関係ない。ただ自分の大切なものを守りたくて、その結果、そんなことになったってだけで…。魔法で誰かを助けたいと思った、その気持ちを憎むな」

「…!」

誰かを助けたいその気持ちに、魔法が使えるかどうかなんて関係ない。

この子はただ、魔法そのものを憎みでもしなければ…自分を立て直せなかったのだ。

「…あんた、本当に魔法を憎んでるのか?」

「…」

「本当に、魔法が悪いと思ってるのか?魔導師が存在するのが悪いって?…思ってないよな、そんなこと」

本当に魔法が憎いのなら、シルナを逮捕させる為だからって、魔法なんて使わないよ。

彼女はシルナを逮捕する証拠を作る為に、他でもない自分の手で、魔法を使った。

俺達とこの子は同じなのだ。

ただ、目指す方向性が違うだけ。

魔法を使って、世界をより良くしたいというその気持ちは…同じだ。