「彼女」は、私の言葉に耳を貸してはくれなかった。

人々から、大量の力を吸い取り続けた。

力を吸い取れば、人の形に戻るものだと思っていた。

でも、彼女は戻らなかった。

肉の塊だったものが、更に力を吸い取って、更に巨大な異形の化け物に成り果てた。

「う、嘘でしょう…?ねぇ…」

こんなの、彼女じゃない。

私の親友じゃない。

「助けてくれ!」

「魔法を止めて!これ以上は…」

里の人々が、私に向かって必死に訴えた。

私だって、そうしたいのは山々だ。

止められるものなら、今すぐにでも止めたい。

でも、止められないのだ。

これはもう、私の魔法じゃない。

彼女の…いや、この化け物の魔法になってしまっている。

「やめて!お願いだからっ…!」

私は「彼女」にすがりついた。

この異形が本当に彼女なら、こんなことはしないはずだ。

何よりも愛していた故郷の人々を苦しめるなんて、彼女は望まないはず。

しかし、「それ」は彼女ではなかった。

すがりつく私をものともせず、人々の力を容赦なく吸い取った。

「やめてっ…。お願い。やめてぇぇぇ!」

私の制止を振り切って、「彼女」は吸い取れるだけ吸い取って…。

力の全てを絞り尽くされた人々は、バタバタと倒れていった。

私以外の全ての人が、干からびたミイラのようになって死んだ。

後になって残ったのは、私と、そして人々から吸い取った命の力で、醜く肥え太った「彼女」だけだった。