彼女の骨と遺髪に魔法をかけると。

里の皆が固唾を飲んで見守る中、彼女の身体が再生し始めた。

誰もが歓声をあげた。

私も、魔法をかけながら、手応えを感じた。

あと少しだ。

彼女の身体は、まだ人の形をしていなかった。一つの肉の塊だった。

もう少し魔法をかけて、人々の生力を集めて注ぎ込めば、人の形に戻るはずだ。

私は更に魔法を加速させ、人々から命の力を集めた。

彼女の塊が、ギョロリと目を開き、私を見つめた。

そのとき。

「…!?」

突如として、私の魔法が私の手を離れた。

魔法が止まってしまったのかと思った。でも、止まってはいなかった。

術者の手を離れた魔法は、すぐに止まってしまうはずなのに。

「うわぁぁぁ!やめてくれ!」

「やめてぇぇぇ!」

「!?」

皆が、いきなり苦悶の呻き声や叫び声をあげ始めた。

一体何が起きているのか。

彼らは地面に倒れ、胸を抑え、苦痛に喘いでいた。

生力を吸われているのだ。

それも、先程までとは比べ物にならない速度で。

でも、どうして?私はもう魔法を使ってない。

大体私は、里の人々に負担をかけないように、彼らからほんの少しずつ力を分けてもらっていただけ。

多少疲労感を感じはするだろうが、ここまで苦しむほど力を吸っていた訳では…。

「…!」

そのとき、私は気がついた。

彼らから命の力を吸い上げているのは、私ではない。

目の前にいる、肉の塊となった彼女。

彼女は、私から発動中の魔法を奪い、里の皆の生力を大量に集めているのだ。

そんなことをしたら。

そんなことをしたら、皆が死んでしまう。

「やめて!お願い!」

私は変わり果てた彼女にすがりついた。

しかし。

最悪の状況は、まだ始まったばかりだった。