最初は、まさかそんな方法、と思った。

出来るはずがないし、出来たとしても、考えるまでもなくそれは禁忌だ。

でも、私はそれを聞いて「やってみたい」と思った。

純粋にそう思ってしまった。

彼女がもしも、生き返るなら。

彼女がもしも、私のもとに戻ってきてくれるのなら。

命を、やり直せるのなら。

そして、それが出来るかもしれない力があるのなら。

私は彼女の親友として…それをやるべきなのではないか?

彼女は私に、それを求めているのではないか?

彼女が死んでからというもの、何も出来ずに泣き暮らすしか出来なかった私に、神は立ち上がる力を与えた。

死者の蘇生という、禁忌に触れる力を。

私はその日から、彼女を取り戻す為の魔法を研究し始めた。

人間、追い詰められるとどんな手段でも用いるようになる。

とうとう、私は死者蘇生の方法を編み出すことに成功した。

さすがに人間で実験は出来ないので、最初は小さな虫を使って実験した。

次にネズミを使い、最終的に犬で実験を行って、それは成功した。

しかし、この方法には致命的な欠点があった。

何かと言うと、命を得るには、命を捧げなければ叶わない、という点だ。

つまり、生き返らせるには、他の誰かの命を犠牲にしなければならない。

一匹のアリを生き返らせるには、別の生きているアリの命が必要で。

一匹のネズミを生き返らせるには、別の生きているネズミの命が必要。

そして一人の人間を生き返らせるには、別の人間の命が必要だった。

これでは、生き返らせる意味がない。

彼女を生き返らせる為なら、命を捨てても構わない、という人もいた。

彼女の祖父、里の長老もその一人だった。

自分はもう老いた身。どうせあと何年も生きないのだろうし、ならば残されたこの命を孫娘に捧げ、孫娘を生き返らせることこそ、老いぼれの自分に出来る最後の奉公だと。

けれど、私はその申し出を断った。

誰かを助ける為に他の誰かの命を使ったのでは、死者蘇生の意味はない。

彼女だって、自分が助かる為に祖父が犠牲になったと知れば、きっと私を許さないだろう。

彼女はそういう人だった。

だから私は、誰も犠牲にせず、彼女を生き返らせる方法を編み出した。

里の人々全員に協力してもらう方法だ。

誰かの命を丸々全部費やすのではなく、多くの人から少しずつ生力を集め、それを彼女の肉体に注ぎ込んで、人間一人分の命に換えるというもの。

理論上は、この方法でも可能だった。

動物実験も行い、成功した。

この方法を使えば、誰も死ぬことなく彼女を取り戻せる。

そう話すと、里の皆は大喜びだった。

特に彼女の祖父は喜んだ。自分の命と引き換えにしても良い、とは言っていたが、やはり孫娘が帰ってきたとき、自分も生きて彼女を迎えたかったのだろう。

誰もが私に期待した。

誰もが私を女神のように崇めた。

そして私は、皆の期待に応える為に。

何より、今度こそ彼女を助ける為に。

禁忌の魔法を、使った。