何やら息を切らしてやって来た二人だが、何故かここにいる羽久やら、粉々の壁やら、突如として美女になった担当官やらを見て、さすがに困惑していた。

「が、学院長…?これは…?」

「あー…。うん、話せば長くなるんだけど…。それより、二人はどうしたの?」

「え?あ、その…。私、先程レティシアさんに会ってきたんです」

さすがはシュニィちゃん。

この状況について、色々聞きたいことはあるだろうに…。早速本題に入ってくれた。

で…レティシアちゃんに会ってきたと。

レティシアちゃんと言えば、色々あってイーニシュフェルトに入学したけど、色々あって退学して、今は王立図書館の魔導書フロアで司書さんをしている、私の元教え子である。

「レティシアちゃんに…どうして?」

「証拠品として押収された、学院長室で発見されたという禁書…。あれは偽物です」

…偽物、だって?

まぁ私は学院長室に禁書なんて置いたつもりはないから、見つかったという禁書が何かの間違いであることは事実なのだが。

「私自身、この目で確認しました。あれは禁書に見せただけの…普通の本です。魔法を使って、狡猾に偽造してありました」

「へぇ…」

私は、証拠品の禁書を見せてはもらっていない。

けれども、シュニィちゃんが見たのなら、確かな情報だ。

シュニィちゃんは、私の教え子の中でもトップクラスの魔導師だからな。

「その後、レティシアさんのもとに行って、改めて本物の『学院長が盗み出していたはずの禁書』を隈無く探してもらいました。禁書フロアの本棚の天板に、隠すようにして置いてありました」

…ほう。

学院長で押収されたはずの禁書が、王立図書館の本棚に隠されていた。

そして、押収された証拠品の「禁書」は、魔法で禁書に似せただけの、普通の本。

これだけで、もう私を有罪とする証拠の一つが消えたな。

「その後、押収された本を『禁書だ』と判定した図書館職員にも話を聞きましたが、彼女はその日の記憶が曖昧で、矛盾した発言もいくつか見られ…。魔法によって、何らかの記憶の改竄が行われた可能性があります。故に、証拠品の禁書は、証拠品として成立していないと判断出来ます」

「…!」

担当官の彼女は、焦ったような顔で唇を噛み締めた。

重要な秘密が暴露されたときの顔だ。

そして。